抄訳
骨の動的な恒常性は、破壊と形成のバランスにより保たれ、常に骨を新しく作り替えている。セマフォリン3A(Sema3A)は、破骨細胞による骨吸収を減少させ、骨芽細胞による骨形成を増加させることで骨保護因子として機能する(Nature 2012)。さらに、女性ホルモンであるエストロゲンが、Sema3Aの発現を調整していることもヒトおよびマウスにて実証された(Cell Metab 2019)。しかしながら、男性ホルモンによる骨恒常性の分子機構は、いまだ詳しく解明されていなかった。
本研究では、Sp7-Creを使用したSema3A欠損マウスは椎体の骨量が正常である一方、Bglap-Creを使用した骨芽細胞系統の細胞で特異的なSema3A欠損マウスでは長管骨と椎体の両方の骨量減少が見出された。さらに、アンドロゲン欠乏により誘導される男性骨粗鬆症は、骨芽細胞系譜特異的なSema3A欠損マウスでも同様に認められた。すなわち、骨芽細胞系譜の細胞が発現するSema3Aが、アンドロゲン非依存的に長管骨や椎骨の骨恒常性を制御していることが明らかになった(Endocrinology 2022)。