抄訳
多くの鳥類は一夫一妻のつがいで繁殖します。それはヒナを育て上げるための餌運びの労働コストが非常に大きく、つがいで繁殖することが有利だからです。しかしつがいの巣には、つがい外のオスとの交尾に由来するヒナ(つがい外父性)やつがい外のメスの托卵によって産み込まれた卵に由来するヒナ(種内托卵)を含むことがあります。オスはできるだけ多くのヒナを残し、メスは生産性の高い子を残すための繁殖戦略の一側面です。一方で自らと血縁関係にはないヒナのために餌を運ぶことは、自身の生存率を下げ、またその後の繁殖に悪影響を与えます。そのため、つがいのオスとメスはヒナの血縁関係と労働の配分という複雑な駆け引きをします。このような背景から自らの巣内に血縁関係のないヒナが存在すると、巣の持ち主である親はヒナへの子育て投資を減少させると推察されます。しかしこのような研究に適した材料がなく、実証は困難な状況にありました。本研究では、一夫一妻で繁殖するスズメにおいて、つがいの巣内につがい外父性や種内托卵の双方を含むことを発見しました。さらに巣内に自らと血縁関係にないヒナが多くなると、子育ての労力を減少させることを実証しました。