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2023/06/16

Fezf2は中枢性免疫寛容に必要な胸腺自己抗原発現を制御する

論文タイトル
Fezf2 Orchestrates a Thymic Program of Self-Antigen Expression for Immune Tolerance
論文タイトル(訳)
Fezf2は中枢性免疫寛容に必要な胸腺自己抗原発現を制御する
DOI
10.1016/j.cell.2015.10.013
ジャーナル名
Cell
巻号
Vol.163 No.4(p975-987)
著者名(敬称略)
高柳 広
所属
東京大学大学院医学系研究科

抄訳

T細胞は胸腺において分化・成熟する。その過程では、抗原を認識するタンパク質であるT細胞抗原受容体がランダムに作られるため、自己抗原に反応するT細胞が必然的に生まれてしまう。そのような自己反応性のT細胞は胸腺内で除去される(負の選択)。本論文では、胸腺に発現し、自己反応性T細胞の選別に関わる自己抗原発現を制御する転写因子Fezf2を見いだした。Fezf2は、既知の転写制御因子Aireとは独立して自己抗原を誘導する。Fezf2を持たない遺伝子改変マウスを調べたところ、自己抗体の産生や自己の組織を破壊するといった自己免疫疾患様の症状が見られた。この結果は、Fezf2が中枢性免疫寛容に必須の分子であり、自己免疫疾患の発症を抑えていることを示している。Fezf2の発見は、高等生物の獲得免疫システムの基本原理の理解につながるだけでなく、自己免疫疾患の発症機序の解明や新たな治療法の確立に役立つと考えられる。 

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