抄訳
細胞膜の理解に関して、全く違った二つの視点が存在する。一つは、細胞膜は元来のシンガー・ニコルソンの流動モザイクモデルによって記述される単純な流体、というものである。他方は、細胞膜は、数千の分子種が互いに様々な相互作用をすることで形成され、かつ常に変化するクラスタとドメインからなっており、細胞膜の構造と分子動態を説明する単純な規則は存在しないとするものである。現在では、後者の見方が一般的である。しかし、何らかの規則は見いだせないものであろうか? 本総説で、我々は、細胞膜の二つのもっとも主要な構成要素であるコレステロールとアクチン線維の観点から細胞膜を見ることが、細胞膜の組織化、動態、および機能の作動機構を理解するための優れた視点を提供すると提案する。特に、細胞膜内で共存するアクチンによる区画(仕切り)と脂質ラフトドメイン、および、それらの相互作用が細胞膜の構成に重要であり、それらがどのように細胞膜の機能を遂行するかについて述べる。この視点から、流動モザイクモデルをさらに発展させた新しい細胞膜モデルを提案する。