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2023/08/23

高水圧によって誘起されるSaccharomyces cerevisiaeのCWI経路活性化は、アクアグリセロポリンFps1を介したグリセロールの排出を促進する

論文タイトル
Activation of CWI pathway through high hydrostatic pressure, enhancing glycerol efflux via the aquaglyceroporin Fps1 in Saccharomyces cerevisiae
論文タイトル(訳)
高水圧によって誘起されるSaccharomyces cerevisiaeのCWI経路活性化は、アクアグリセロポリンFps1を介したグリセロールの排出を促進する
DOI
10.1091/mbc.E23-03-0086
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 34, Issue 9
著者名(敬称略)
阿部 文快 他
所属
青山学院大学理工学部 化学・生命科学科 分子遺伝学研究室

抄訳

真菌の細胞壁は、浸透圧の変化や毒物、あるいは物理的なストレスから細胞を守る最初のバリアとして機能する。私たちは、高水圧にさらされた出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeが、浸透圧調節機構と細胞壁完全性(CWI)経路を活性化し、高水圧ストレスに適応するメカニズムを明らかにした。25MPa(約250 kg/㎠)という高水圧下で酵母が増殖するためには、膜貫通型メカノセンサーWsc1が不可欠であることをつきとめた。すなわち、水圧上昇に伴う水の過剰流入によって細胞が膨潤すると、Wsc1がCWI経路を活性化する。その後、下流のMAPキナーゼSlt2がアクアグリセロポリンFps1をリン酸化することで、グリセロールの排出が促進し、細胞への水の流入が停止する。このようにして浸透圧調節が適切に行われ、酵母は高水圧下で破裂するのを回避していたのである。CWI経路を介した高水圧適応のメカニズムは、真菌だけでなくほ乳動物細胞に適用できる可能性もあり、細胞のメカノセンシングに関する新たな洞察を提供するものと期待される。

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