抄訳
熱帯以外の地域では季節によって環境が大きく変動します。自然界の生物にとって、この環境の季節変化に上手に適応できるか否かは死活問題です。生物は毎年繰り返される季節の変化に積極的に適応するために、概ね(おおむね)1年の内因性のリズムを刻む体内時計「概年(がいねん)時計」を進化の過程で身に着けました。概年時計は繁殖活動や渡り、冬眠などのタイミングを制御していますが、その仕組みはいかなる生物においても謎に包まれていました。
今回の研究では、まずメダカに概年時計が存在することを示しました。また数年間にわたる網羅的な遺伝子発現解析の結果、1年のリズムを刻む「概年遺伝子」を同定することに成功するとともに、脳内での細胞分裂、細胞分化が1年という長期的な「時」を刻むのに重要である可能性を示しました。ヒトにおいても様々な疾患に季節変化が存在します。今後、それらの季節性疾患の分子機構のほか、様々な生物にみられる季節にまつわる営みの分子機構が明らかになることが期待されます。