抄訳
ハチミツは水分活性が極端に低い(0.5–0.7)極限環境の1つである。著者らは日本国内のハチミツ中の真菌の多様性調査を進める中でTalaromyces属Trachyspermi節に属する未記載種と思われる菌株を複数分離した。4遺伝子領域の部分塩基配列を用いた分子系統解析を行った結果、これらの菌株はTalaromyces affinitatimellis、Talaromyces basipetosporus、Talaromyces speluncarumと近縁であることが明らかになった。形態学的観察を行った結果、3種類の平板培地における菌糸成長が近縁種よりも良いことが分かった。またスクロース濃度0–80%の培地で菌糸成長が可能であり、スクロースを添加した培地で菌糸成長及び胞子形成が促進されたことから、ハチミツ内の環境に適応していることが示唆された。これらの結果に基づき今回筆者らが分離した菌株について新種Talaromyces mellisjaponiciを提案した。