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2024/01/23

VP2トランス供給によるレポーター遺伝子が組み込まれた感染性ネズミノロウイルスの作製

論文タイトル
Production of infectious reporter murine norovirus by VP2 trans-complementation
論文タイトル(訳)
VP2トランス供給によるレポーター遺伝子が組み込まれた感染性ネズミノロウイルスの作製
DOI
10.3174/ajnr.A5927
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology, Ahead of Print
著者名(敬称略)
石山涼翔、吉田和夫、及川和樹、芳賀慧、片山和彦 他
所属
北里大学 大村智記念研究所 ウイルス感染制御学
著者からのひと言
我々の発見は、同様のプラスミドベースリバースジェネティックスシステムを有するHuNoVだけで無く、カリシウイルス科に属するウイルス研究に広く応用可能だと思われます。本研究で、作出したレポ-ター遺伝子を内包させた感染性ウイルスは、安定して継代可能な初めてのノロウイルスです。今後、小動物感染モデルの体内動態、細胞への侵入機構の解明などの研究進展への貢献が期待されます。

抄訳

ヒトノロウイルス(HuNoV)は、感染性胃腸炎の原因ウイルスとして知られていますが、効率良くHuNoVを増殖培養可能な株化培養細胞が無く、効果的な治療法やワクチンの開発が遅れています。ネズミノロウイルス(MNV)は株化培養細胞で増殖培養が可能なノロウイルスで、感染モデル動物としてマウスを利用可能なため、HuNoVの構造および機能的な特性を解明するためのモデルウイルスとして頻繁に使用されています。我々が開発したプラスミドベースのMNVリバースジェネティックスシステムは、簡便に組換えウイルスを作製することが可能です。本研究では、MNVゲノムのORF3(VP2コード領域)の5‘側約1/3〜2/3の領域を任意の外来性遺伝子で置き換え、VP2をトランス供給することで、外来性遺伝子がゲノムに組み込まれた感染性ウイルスを作製することに成功しました。この組換えウイルスは、VP2がトランス供給された細胞では、複製増殖が可能で、安定した大量生成が可能ですが、VP2をトランス供給しないと複製増殖できず、一度しか感染できません。我々の発見は、ノロウイルスのライフサイクルにおけるVP2の機能解明に利用可能であるとともに、外来性遺伝子を導入したレポーターウイルス作製の他、高度弱毒化生ウイルスワクチンやドラッグデリバリーシステム開発に有用です。

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