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2024/01/25

時計遺伝子BMAL1はヒト顆粒膜細胞における性ステロイド生合成を制御する

論文タイトル
BMAL1 positively correlates with genes regulating steroidogenesis in human luteinized granulosa cells
論文タイトル(訳)
時計遺伝子BMAL1はヒト顆粒膜細胞における性ステロイド生合成を制御する
DOI
10.1530/REP-23-0225
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 167: Issue 2
著者名(敬称略)
河村 ともみ、戴 易丹、小野 政徳 他
所属
東京医科大学産科婦人科学分野
著者からのひと言
これまでストレスや体重減少による性ステロイド分泌異常が報告されてきました。今回、時計遺伝子異常によって性ステロイド分泌異常が起こることが明らかとなりました。本研究は、概日リズムの乱れが不妊症や月経不順に繋がるメカニズムの一端を明らかにした点で重要な学術的意義があります。

抄訳

【背景】
概日リズムは生体機能維持に重要な役割を担う。そしてBrain and muscle arnt-like protein-1 (BMAL1)、Circadian locomotor out cycles kaput (CLOCK)、Period Circadian Regulator (PERIOD)、Cryptochrome Circadian Regulator (CRY)などの時計遺伝子は生殖器官にも発現している。これまでにBmal1全身ノックアウトマウスは不妊であることが報告されたが、ヒトにおける不妊症と時計機能異常に関する研究は限られていた。本研究では、ヒト顆粒膜細胞における時計遺伝子の発現と性ステロイド生合成を解析した。
【方法】
生殖補助医療で採取された余剰卵胞液中から顆粒膜細胞を分離した。また、ヒト顆粒膜細胞腫由来の細胞株KGNと、不死化ヒト顆粒膜細胞HGL5をin vitroモデルとして使用した。低分子干渉RNA (siRNA)を用いて、BMAL1発現を抑制あるいは強制発現し、性ステロイド生合成への影響を解析した。
【結果】
BMAL1は性ステロイド生合成関連遺伝子発現と正の相関を認めた。BMAL1を抑制すると、ステロイド合成酵素の発現が有意に低下し、性ステロイド分泌も抑制された。一方、BMAL1を強制発現させると、ステロイド合成酵素の発現が有意に増加した。これらの結果は、BMAL1が顆粒膜細胞における性ステロイド生合成を制御していることを示している。
【結語】
BMAL1がヒト顆粒膜細胞におけるステロイド生合成を制御することが明らかとなった。

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