抄訳
【背景】 中枢性尿崩症(AVP欠乏症:AVP-D)の治療に、デスモプレシン口腔内崩壊錠(ODT)が広く使用されている。しかし、その効果には個人差があり、投与量は通常、開始用量に対する効果に基づき漸増され決定されている。
【目的】様々な臨床所見とODTの1日投与量との関係を検討し、ODT投与量に影響を及ぼす因子を明らかにする。
【方法】 この後方視的研究では、AVP-Dの成人患者209例を対象とした。患者には患者用指導箋を用いてODTを舌下服用後30分間は飲食を制限するよう指導した。ODTの用量漸増は入院下に行われ、尿量、体重、血清Na値を綿密にモニタリングした。退院時のODTの1日投与量に関連する臨床因子を同定するために、多変量線形回帰分析を実施した。また、退院後、当院でフォローした134例の1年後の投与量を評価した。
【結果】 退院時のODTの1日投与量の中央値は90μg(IQR 60-120μg)であった。多変量解析にて、性別・年齢・推定クレアチニンクリアランス(eCCr)が1日投与量に関連する有意な因子であり、eCCrが最も強い影響を及ぼすことが明らかとなった。退院後、当院でフォローアップを行った患者134例中AVP-Dが軽快した患者を除く114例を対象とすると81例(71%)が1年後も同じ投与量を継続していた。
【結論】 安全かつ安定したAVP-Dの補充療法を行うため、患者教育による適切な舌下投与のもと、性別・年齢・eCCrを考慮しODTの1日投与量を決定することが大切である。