抄訳
南極昭和基地の南西約120 kmに位置するインホブデ露岩域の生物調査(2015)において発見されたオニクマムシの1新種をMilnesium rastrumとして記載した。オニクマムシ類は4対の各肢先に2本の細長い爪(第1爪)と2本の短い爪(第2爪)を持つ。これまで世界中から記載された40種以上の第2爪は通常2〜3本に分枝した鉤爪となり、2種のみが4分枝を持つが、今回記載された種では4〜7本に分枝する。また、オスの1標本が得られたことと、1頭のメスの100日以上にわたる飼育中に産卵を伴わない2度の脱皮が観察されたことから、本種の繁殖はオスを必要とする有性生殖であることが示唆された。本種から得られた遺伝子配列(18S rRNA, 28S rRNA, ITS-2, COI)とデータベースから得られるMilnesium類の遺伝子配列を用いて生物系統地理的な解析を行なった。