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2024/02/22

生きたマウス脳における内在性神経伝達物質受容体の生体直交型化学標識

論文タイトル
Bioorthogonal chemical labeling of endogenous neurotransmitter receptors in living mouse brains
論文タイトル(訳)
生きたマウス脳における内在性神経伝達物質受容体の生体直交型化学標識
DOI
10.1073/pnas.2313887121
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.121 No.6
著者名(敬称略)
野中 洋 浜地 格 他
所属
京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻
著者からのひと言
本技術は、原理的にはマウスだけでなく、他の生物種に対しても適用可能です。遺伝学的な方法論では標識困難なマーモセットなどの霊長類を含めた多くの生物種に対しての展開も期待できます。さらに、これまでに確立されたモデル動物実験系にそのまま適用可能であり、病態と受容体動態の関連性などが明らかになることも期待できます。また本技術は、たんぱく質の動態や寿命の解析にとどまらず、今後さまざまな機能性分子の導入により、動物個体内における天然のたんぱく質の機能解明に役立つとも考えられ、研究を進めています。

抄訳

研究グループは、これまで遺伝子操作を必要としない、内在性タンパク質の化学標識法である「リガンド指向性化学」を開発してきました。本法は、リガンドとタンパク質との相互作用と化学反応とを組み合わせた共有結合による標識が可能です。今回、この手法が生きたマウスの脳でも綺麗に進行することを実証し、遺伝子操作なしにマウス脳内の内在性神経伝達物質受容体(AMPA、NMDA、mGlu1、GABA受容体)を化学標識することに初めて成功しました。標的受容体を蛍光色素で標識した後に、透明化処理し全脳3Dイメージングや、膜表面に出ている活性な受容体の分解寿命の解析が可能となりました。さらに、本手法を用いて、生後発達期マウス脳内のAMPA受容体をパルスチェイス解析することで、一度機能を果たしたAMPA受容体が別の異なった役割を果たすシナプスに移動し再利用されていることを、初めて明らかにしました。

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