抄訳
レジオネラ属菌は、重症肺炎の主要な起炎菌のひとつであり、早期診断による適切な治療が予後改善のために重要である。レジオネラ肺炎の早期診断において、尿中抗原検査キットが頻用されているが、レジオネラ肺炎診断のゴールドスタンダードは喀痰培養からのレジオネラ属菌の検出である。これまでレジオネラ肺炎における喀痰の質と喀痰の質別でのレジオネラ検出率に関する報告はなかった。本検討では、喀痰検査を提出したレジオネラ肺炎患者104名において、膿性痰であるGeckler 4/5の患者は8名と少なく、喀痰の質別のレジオネラ検出率はGeckler 1/2で57.1%、Geckler 3/6で50.0%、Geckler 4/5で50.0%と有意差を認めず同等の検出率であった(P=0.86)。レジオネラ属菌の検出率に影響する因子を多変量解析で検討したところ、喀痰培養前の抗レジオネラ活性を有する抗菌薬の投与(OR 0.26, 95%CI 0.06-0.91)、肺炎重症度分類のPSI class IV以上(OR 2.57, 95%CI 1.02-6.71)、ICU入室(OR 3.08, 95%CI 1.06-10.09)が有意に影響していた。また、抗レジオネラ活性を有する抗菌薬投与から喀痰検査提出までの時間とレジオネラ属菌検出率を検討したところ、抗菌薬投与なしあるいは抗菌薬投与24時間以内では24時間以降と比較し有意に検出率が高かった(55.8% vs 11.1%, P=0.04)。レジオネラ肺炎を疑う場合、可能な限り喀痰を採取し検体の質によらず培養を行うべきである。