抄訳
Mycobacterium avium complex (MAC) 症は、非結核性抗酸菌である M. avium および M. intracellulare により引き起こされる感染症である。その治療薬は限定され、それらの 1 年以上の併用投与から耐性菌の出現も問題となり、新規治療薬の開発が強く求められている。本研究では、スクリーニング方法として、抗 MAC 活性を示した微生物培養液を LC-MS ネットワークを用いて既存化合物と重複の少ない候補培養液を選択する手法を用いた。その結果、海洋由来放線菌の培養抽出液より、新規マビントラマイシン (mavintramycin) 群を発見した。特に、成分A (MMA) は既存の MAC 症治療薬に匹敵する抗菌活性を示し、さらには薬剤耐性菌を含む M. avium 臨床分離株に対しても優れた抗菌活性を示した。作用機序解析より、MMA は M. avium の 23S リボソームを標的とし、タンパク質合成を阻害した。また、カイコおよびマウスを用いた in vivo 感染モデルでも、MMA の有効性を確認した。このように MMA は、既存薬とは異なる作用機序を有し、in vivo でも有効性を示したことから、新たな MAC 症治療薬シードとして有望であり、今後の創薬展開が期待される。