抄訳
本研究では、福島第一原子力発電所の原子炉建屋地下の半閉鎖的環境に約9年間滞留したと考えられるトーラス室水に生息する細菌叢の同定および、その生息環境の解析を行った。トーラス室水 (1×109 Bq 137Cs/kg)は、東京電力により最下層部から0.3 - 1mの間 (TW1)と最下層部 (TW2)の2地点から採取された。TW1ではチオ硫酸塩酸化細菌であるLimnobacter属を、TW2ではマンガン酸化細菌であるBrevirhabdus属を中心とする細菌群集が確認され、両者を構成する主要な属は類似していた。これらの細菌群の多様性は福島近隣の海水のそれと比較して低く、トーラス室水から同定された細菌属の約70%が金属腐食に関連するものであった。また、トーラス室水は自然環境である海洋性細菌群と人工環境であるリアクターなどに生息する細菌群との混合環境あることが推定された。