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2024/09/10

医療機関間での血清クレアチニン値乖離が単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の診断に至った一例

論文タイトル
Discrepant serum creatinine concentrations caused by paraprotein interference preceding diagnosis of monoclonal gammopathy of undetermined significance
論文タイトル(訳)
医療機関間での血清クレアチニン値乖離が単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の診断に至った一例
DOI
10.1136/bcr-2023-256242
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
Vol.17 Iss.4 (2024)
著者名(敬称略)
小原 幸、稲葉 亨、中田 徹男、的場 聖明
所属
京都薬科大学 病態薬科学系 - 臨床薬理学分野
著者からのひと言
クレアチニン値に乖離を認めたことより、精査の結果MGUSが診断された症例を経験しました。本ケースは自動検体測定装置からのアラート発出も無く、偽検査結果も極端な基準値からの逸脱でなかったことより、偽結果がそのまま患者本人に返却されました。臨床医は、血液検査結果に乖離を認めた際、本症例の様なパラプロテイン干渉による偽結果も念頭に置き、診療に携わる必要があると考えられました。

抄訳

かかりつけ医療機関と他医での健康診断の際の血清クレアチニン値に乖離が生じており、精査の結果パラプロテイン干渉による検査値異常が見いだされ、MGUSの診断に至った一例を経験した。 症例は70歳代男性。労作性狭心症等で内服薬による加療を受けていた。健康診断を別医療機関で受診し、クレアチニン高値 (1.75 mg/dL)により、腎機能障害を指摘された。かかりつけ医療機関でのクレアチニン値(0.87 mg/dL)と乖離が見られたため、臨床検査部、検査試薬企業検査部とともに精査をすすめた。患者同一検体を用いて、2医療機関で使用されたクレアチニン測定キットを含む複数のキットでの測定結果を、リファレンスとして測定した液体クロマトグラフィーによる結果と検証した。クレアチニン値の測定キットは全て酵素法であったが、検診時の採用キットのみ測定の第一過程で検査試薬添加時に検体の混濁が認められ、最終検査結果に影響を与えたと考えられた。パラプロテイン干渉が疑われ、Mタンパク血漿(monoclonal γgl 0.3 g/dL, IgG-λ)が認められ、MGUSと診断された。検査機関により、血液検査結果に乖離がある場合、パラプロテイン血症による偽結果も念頭におき診療する必要があると考えられる。

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