抄訳
胎児期の小腸組織は、小腸の側底側に接続した血管から染み出す体液が形成する間質流に晒されている。そのため、発生を模倣しながらヒトES/iPS細胞から小腸組織を構築するためには、間質流を考慮した培養系が望ましい。本研究では、マイクロ流体デバイスを用いて間質流を再現した条件で、ヒトES/iPS細胞から小腸組織(マイクロ小腸システム)の構築を試みた。マイクロ小腸システムの小腸上皮細胞は、間質流に晒されることで発達した柔毛様構造を有する上皮層を構築し、その直下には間質層が整列していた。さらに、間質流を作用したマイクロ小腸システムは、小腸上皮細胞から分泌された粘液層を有していた。これらの結果から、マイクロ小腸システムは粘液層および上皮層、間質層から構成される、生体小腸に類似した多層構造を有することが分かった。また、マイクロ小腸システムは、薬物動態研究や腸管感染症研究に応用できることを確認した。今後、マイクロ小腸システムを普及させ、各種腸管疾患研究を加速したい。