抄訳
穿刺吸引細胞診で用いた針の洗浄液中サイログロブリン測定(FNA-Tg)は甲状腺癌リンパ節転移の診断に有用であるが、そのカットオフ値は特に頸部腫瘤のスクリーニング検査において定まっていない。そのため当院で術前FNAC、FNA-Tg施行後病理検査を行った甲状腺外の頸部腫瘤病変を対象に後方視的研究を行った。210病変中57病変が甲状腺由来で、甲状腺由来病変ではFNA-Tg値が有意に高く(p:0.001)、ROC曲線で特異度100%となる最小のFNA-Tg値をカットオフとすると32.2ng/mlであった。甲状腺乳頭癌症例では、FNACよりもFNA-Tgの感度が高かった。今回のFNA-Tgのカットオフ値は、リンパ節以外の病変や甲状腺以外の転移リンパ節が比較的高値だったため、過去の報告より高くなった。FNA-Tgを頸部腫瘤のスクリーニング検査として用いるのであれば、より高いカットオフ値を設定する必要がある。