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2024/10/16

ラットの繁殖効率の違いは生殖フェロモンの産生と関連している

論文タイトル
Fecundity difference is related to the production of reproductive pheromones in rats
論文タイトル(訳)
ラットの繁殖効率の違いは生殖フェロモンの産生と関連している
DOI
10.1530/REP-24-0104
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Accepted Manuscripts REP-24-0104
著者名(敬称略)
山田 俊幸、佐古 兼一、土田 成紀、山本 博之 他
所属
日本薬科大学 薬学科 生命科学薬学分野
著者からのひと言
弘前ヘアレスラット(HHR)は、筆頭著者(山田)が以前在籍していた弘前大学医学研究科においてSDラット(SDR)より自然発生した乏毛ラットであり、毛のケラチン遺伝子をいくつか欠失しています。HHRがSDRに比べて「よく増える」ことはかねてより気付かれていましたが、その機序は不明でした。今回、オスの眼窩外涙腺由来の生殖フェロモンの関与が示唆され、その原因解明に一歩近づきました。今後は、ケラチン遺伝子の欠失と生殖フェロモンの産生との関連性の解明に興味がもたれます。

抄訳

げっ歯類においてはフェロモンが生殖に重要な役割を果たしている。弘前ヘアレスラット(HHR)はSDラット(SDR)に由来する変異ラットである。HHR同志、SDR同志の交配では、HHRはSDRより高い繁殖効率を示した。HHRオスとSDRメスあるいはその逆の交配実験から、この繁殖効率の違いはオスに起因することが示された。一方で、すべての交配において産児数に有意差はなく、オスの精巣上体中の精子の数、形態、運動性、さらに血清テストステロン濃度に差はなかった。また、HHRオス、SDRオスそれぞれ1匹とメス1匹の計3匹を同居させたところ、常にHHRオスの子供が生まれた。これらのことから、HHRとSDRの繁殖効率の違いは交尾の成功率の違いによると考え、次に、メスに生殖行動を起こさせるオス由来のフェロモンの関与について検討した。肝臓由来のフェロモンであるDarcin (MUP20)の遺伝子発現はHHRオスとSDRオスの間で差はなかったが、眼窩外涙腺の重量はHHRオスの方が大きく、そこで産生されるフェロモンであるESP1とCRP1の量も多かった。以上の結果から、これらラットの繁殖効率の違いにはオスの眼窩外涙腺での生殖フェロモンの産生量の違いが関与しているものと考えられた。

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