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2024/10/31

動物界の排卵:全動物の排卵に共通の細胞メカニズムを求めて(総説)

論文タイトル
An attempt to search for the common cellular mechanism of ovulation across all metazoans: A review
論文タイトル(訳)
動物界の排卵:全動物の排卵に共通の細胞メカニズムを求めて(総説)
DOI
10.1530/REP-24-0184
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Accepted Manuscripts REP-24-0184
著者名(敬称略)
高橋 孝行 荻原 克益
所属
北海道大学 大学院理学研究院 生殖発生生物学研究室 荻原グループ
著者からのひと言
これまで様々な動物種を用いて行われてきた排卵研究の知識を整理し,動物界の排卵に共通するメカニズムの追究を試みた初めての総説論文で,reviewersによりherculean effortにより仕上げられたencyclopedic reviewと評された。著者らが永年に亘り従事してきた排卵研究の経験を基に,5年の歳月をかけて2024年までの排卵研究の情報をまとめている。現在,排卵研究に携わっている研究者,これから排卵研究に参入しようとしている若い研究者,さらには動物の卵巣においてどのように卵が成長し排卵に至るのかについて知りたい大学院生のみならず生殖生物学とは無縁の研究者など,排卵研究の現状の把握や基本知識の習得に本総説論文は役立つものと信じる。

抄訳

排卵は卵巣から受精可能な卵が放出される現象を指し,有性生殖により子孫を残すすべての動物にとって不可欠な過程である。10動物門に属する11種の動物の排卵について文献調査から,多くの動物では濾胞破裂という様式によって排卵すること,さらに濾胞破裂による排卵する動物の濾胞においては,2つの重要な細胞学的イベントが共通して誘起されることを提唱した。1)卵を取り囲む濾胞細胞の細胞結合システム(Cell-Cell junctions およびcell-ECM junctions)に変化が起こり,それによって濾胞細胞内の細胞骨格タンパク質の再配置が誘導され,同時に,2)濾胞細胞間を埋めるECMタンパク質の分解が起こることによって,濾胞細胞が変形および移動性を獲得し,濾胞壁の一部に卵を濾胞外に送り出すための通路が形成される。哺乳類や魚類などの脊椎動物の濾胞においては多量のECMタンパク質が濾胞壁に蓄積しており,これらの動物の排卵ではECMタンパク質の分解がより一層重要性を増す。本論文では,動物の排卵の進化および今後の排卵研究の課題についても論じている

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