抄訳
糖転移酵素は複雑な糖鎖を合成する酵素であり、細胞において重要な役割を果たしています。糸状菌はガラクトフラノースという珍しい糖を含む糖鎖を合成し、それを細胞壁に組み込んでいます。GfsAは、糖鎖の非還元末端側のβ-ガラクトフラノース残基の5位の水酸基にUDP-α-D-ガラクトフラノースからβ-ガラクトフラノースを転移する酵素です。本研究では、肺アスペルギルス症を引き起こすAspergillus fumigatus由来のGfsAの基質結合構造と触媒機構を解明しました。マンガンイオン (Mn²⁺)、糖供与基質の生成物 (UDP)、および受容基質 (β-ガラクトフラノース) を含む複合体構造を明らかにしました。GfsAは、糖転移酵素に典型的なGT-Aフォールドドメインに加え、N末端およびC末端によって形成される独自のドメインを持っていました。N末端は他のGfsAのGT-Aドメインと相互作用し、二量体を形成していました。Mn²⁺、UDP、およびβ-ガラクトフラノースを含む活性中心は溝状の構造を形成しており、この構造は他の真菌類由来のGfsAにおいて高度に保存されていました。本研究は、ガラクトフラノース糖鎖合成の理解に必要な基礎的知見を提供し、将来的な新規抗真菌薬の開発に貢献する可能性があります。