本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2024/12/25

ネオセルフは全身性エリテマトーデスにおける自己応答性T細胞の主要な標的抗原である

論文タイトル
Neoself-antigens are the primary target for autoreactive T cells in human lupus
論文タイトル(訳)
ネオセルフは全身性エリテマトーデスにおける自己応答性T細胞の主要な標的抗原である
DOI
10.1016/j.cell.2024.08.025
ジャーナル名
Cell
巻号
Volume 187, Issue 21
著者名(敬称略)
筆頭著者:森 俊輔、連絡著者:荒瀬 尚
所属
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫化学研究室
著者からのひと言
従来の免疫学における基本概念では、T細胞が自己(セルフ)と病原体などの異物(ノンセルフ)を識別することとされてきました。しかし、この考え方だけでは、自己に対する免疫応答である自己免疫疾患を十分に説明することはできません。この論文は、T細胞がセルフと異常な自己抗原であるネオセルフを識別し、ネオセルフに対する免疫応答が自己免疫疾患の引き金となることを明らかにしました。この研究により、長年謎であった自己免疫疾患の病態が解明されるとともに、T細胞の新しい認識機構が発見されました。

抄訳

MHCクラスII(MHC-II)は全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患感受性における最も強力な遺伝的要因であるが、どのような自己抗原がMHC-II分子に提示され自己免疫疾患の標的となるかは不明である。インバリアント鎖は、MHC-IIのペプチド抗原提示に必須の分子であるが、インバリアント鎖非存在下ではネオセルフと総称される異常な自己抗原がMHC-II上に提示される。我々は、ネオセルフがSLEでクローン増殖した自己応答性T細胞の主要な標的抗原であることを発見した。成熟マウスにおいてインバリアント鎖を低下させネオセルフの提示を誘導すると、ネオセルフ反応性T細胞が増殖し、ループス様の自己免疫疾患を発症した。さらに、SLE患者でもネオセルフ反応性T細胞が有意に増殖していることが判明した。高頻度のEBウイルス再活性化はSLEの環境的危険因子であることが報告されている。SLE患者の自己応答性T細胞は、EBウイルス再活性化によりインバリアント鎖が低下し提示されたネオセルフに反応し活性化された。これらの結果は、MHC-IIによるネオセルフ提示がSLEの発症に重要な役割を果たしていることを示している。

論文掲載ページへ