抄訳
背景:周期性クッシング症候群は、周期的にコルチゾール過剰が起こる稀な病態である。ACTH依存性周期性クッシング症候群の寛解に、グルココルチコイドのポジティブフィードバックの抑制が関与すると考えられてきた。しかし、その高コルチゾール血症の発症の誘因は明らかではない。我々は、外因性のグルココルチコイドがポジティブフィードバックを介してACTH依存性周期性クッシング症候群を発症させたと考えられる一例を報告する。
症例:75歳女性。ACTH、コルチゾールの高値を4年間で6回周期性に繰り返し示し、周期性クッシング症候群と診断された。高コルチゾール血症の時期には、低用量および高用量デキサメサゾンでACTHやコルチゾールは抑制されなかった。高コルチゾール血症の時期に、メチラポン連日投与はACTHとコルチゾールをともに低下させた。6回目の寛解後、誤ってヒドロコルチゾン25 mgを連日内服したところ、4週間後にACTH依存性の高コルチゾール血症が発症した。デキサメサゾン1 mgの内服では、2週間かけてACTHおよびコルチゾールが徐々に上昇し、高コルチゾール血症が発症した。デキサメサゾンとメチラポンの併用では、ACTHとコルチゾールは上昇せず、高コルチゾール血症の発症を防ぐことができた。
結論:外因性グルココルチコイドによりACTH依存性高コルチゾール血症を発症した周期性クッシング症候群を報告した。グルココルチコイドのポジティブフィードバックと内因性のコルチゾール合成が周期性クッシング症候群の周期性形成に重要な役割を担うと考えられた。