英国の高等教育24機関が2010年から2014年2月までに支払った論文出版加工料 (APC)のデータの収集調査が英JISC Collectionsの命を受けたInformation Power社により実施された。集計されたデータは匿名化されJISC Collectionsの Stuart Lawsonがスプレッドシートのまま公開している。 同氏は, データの正確性に関しては, 多くの機関が時間の制約と新しく登場した 複雑な処理体系に苦闘し集めたため不十分であることを認識しつつも, APC支出の 規模感の現状と資金の行先の概観を知るために有効な資料になると期待している。 以下に, このデータから読み取った3つの傾向を記す。
1.年ごとのAPCの総額と総件数を見ると, 2010年は£641,798(380件), 2011年 £817,434(468件), 2012年£973,722(566件)と微増傾向で推移していたが 2013年には£3,984,280(2,364件)と4倍以上に急増した。これは英国公的助成 機関がOA誌での公開を支持したことが要因と考えられる(小紙245号参照)。 なお, 2014年の数値は£9,877,248(5,958件)とされているが, 1,2月の数値を 6倍した予想値が使われている。
2.2014年の出版者ごとの支払額の集計では, 1位がWileyで£379,959(23.1%), 続いてElsevierが£372,939(22.7%), 単独の出版者ではその次にPLoSが £101,749(6.2%), Oxford大学出版局が£85,851(5.2%)となっていて, 主要出版者が変わらぬ存在感を見せている。
3.論文あたりのAPCの出版者平均額は2010年では最安がBMJの£1,489, 最高が Elsevierの£2,316だったが, 2014年にはどの出版者も£1,737~2,089のレンジに 収まり差が縮まった。
JISC Collectionsによる本調査は, APCだけでなく年間購読ライセンスの支出 も収集し, 総所有コストの状況を把握し出版者との交渉に役立てることを目的 としている。今後の分析成果の公開で, 出版者によるAPCと購読料金のいわば 二重取り状況の実態の解明が進むことが期待される。

Lawson, Stuart (2014): Jisc Collections aggregated APC data 2014. figshare.
http://dx.doi.org/10.6084/m9.figshare.1060243
Retrieved 12:10, Aug 29, 2014 (GMT)
Lawson, Stuart (2014): Analysis of Jisc Collections APC data. figshare.