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2013/03/31:第237号 米国でのオープンアクセス義務化の近況:FASTRとOSTP
 

米国でのオープンアクセス義務化の近況:FASTRとOSTP

米国で公的資金によって助成された研究成果の無償公開の義務化に関する文書が相次いで提出された。一つは2013年2月14日に超党派の議員により米国議会上下両院に提出された法案Fair Access to Science and Technology Research ACT (FASTR)で,もう一つは同月22日に米ホワイトハウス科学技術政策室(OSTP)が発行した覚書である。両者の基本的な目的は連邦政府より資金援助を受けた研究結果に納税者がアクセスできるようにすることにあるが,方針内容や性質において相違点が存在する。以下に両者の比較を簡単にまとめた。

<類似点>
 両者とも1億ドルを超える研究費を助成する連邦政府各機関に対しパブリックアクセスの方針の策定を求めている。方針の内容には連邦政府による資金援助を受けて査読誌に掲載された研究論文を安定したレポジトリにてデジタル形式で長期保存し,パブリックアクセスができるようにすることを盛り込むように規定している。 また論文を容易に検索・分析できるようにすることで再利用しやすくすることが挙げられている。
 オープンアクセス(以下OA)化の例外として,双方に範囲の差はあるが,機密情報や知的財産権に関わる情報,研究ノート,レポート,分析データなどを定義している。
 策定された方針は適正に遂行されているか定期的に報告書や会合の形で評価され,その内容もインターネットを通じて公開することが求められている。

<相違点>
 上記のように両者とも似通った方針内容であるが,パブリックアクセスに至るまでのエンバーゴ期間に違いが存在する。FASTRでは査読誌での出版後6か月以内にパブリックアクセスを提供することを求めているのに対し,OSTPの覚書では出版後12か月のエンバーゴ期間を基本としながらも必要に応じて期間変更が可能であり,より柔軟な運用を図っている。
 またFASTRは法案という性質上,議会による承認と大統領による署名の上で条文化され,はじめて施行されるものであるが,OSTPによる覚書はホワイトハウスから連邦機関への指令であるため,現時点で覚書内の基準を満たす機関はパブリックアクセス方針を策定しなければならない。

 OA義務化による影響が大きいAAP(米国出版者協会)はOSTPの覚書を支持しFASTR不支持の立場を示している。2つの方針は米国に留まらず世界の学術情報のコミュニティー関係者間で既に反響を呼んでいる。
今後の両者の進展と他国の助成機関や政府・議会への影響が注目される。

・The Fair Access to Science and Technology Research (FASTR) Act of 2013
 -上院提出版概要
http://www.wyden.senate.gov/download/id=93ab22b9-0f28-45ee-b2d7-8c5eb79792b9&download=1 ,(accessed 2013-3-28)

 -下院提出版
http://lofgren.house.gov/images/stories/pdf/2013%2002%2014%20doyle%20lofgren%20yoder%20fastr%20final.pdf ,(accessed 2013-3-28)

・MEMORANDUM FOR THE HEADS OF EXECUTIVE DEPARTMENTS AND AGENCIES
http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/ostp_public_access_memo_2013.pdf ,(accessed 2013-3-28)

・U.S. Takes Huge Step Forward in Opening Access to Publicly Funded Research
http://newsbreaks.infotoday.com/NewsBreaks/US-Takes-Huge-Step-Forward-in-Opening-Access-to-Publicly-Funded-Research-87936.asp ,(accessed 2013-3-28)

・AAP Supports OSTP Policy Urging Collaboration in Public Access
http://publishers.org/press/95/ ,(accessed 2013-3-28)

JSTOR:新検索インターフェース(Beta版)の公開

JSTORは3月7日に,新検索インターフェースBeta版のリリースを発表しました。Beta版は現在すでに公開されています。

 新インターフェースの特徴は以下の通りです。
 ・検索結果の関連度ランキングの改善(検索語がヒットしたフィールドで重要度を考慮)
 ・検索語入力時のオート・サジェスト機能とスペルチェック
 ・雑誌や本の検索結果詳細をプレビュー表示
 ・検索結果をファセット分類による絞り込み検索

 検索対象は正規運用版のJSTORと同じですが,新規追加コンテンツは,現在のところ,運用版から48時間遅れて収録されます。検索結果のデフォルト設定は,機関が契約しているコンテンツのみ表示されるようになっています。

 数か月間Beta版として公開し,フィードバックに基づく改良を進め,現在のインターフェースとの並行運用を経て,最終的に完全移行する予定です。

・JSTOR Beta Search
http://about.jstor.org/beta-search

Reprints Desk:Open Access Filter提供開始

ドキュメントデリバリーサービスを提供する米Reprints Desk社は,3月20日にOpen Access Filterの提供を開始することを発表しました。Open Access Filterは発注された文献に対し,オープンアクセスコンテンツの有無を確認します。入手可能な場合はOA文献へのリンクを利用者に提供します。

 Reprints Desk社のCEO,Peter Derycz氏は「ドキュメントデリバリー第一の役割は,文献複写にかかる不要なコストの削減に貢献することであり,この機能はまさにその役割を果たしている。」と述べています。

 詳細については弊社までお問合せください。

・Reprints Deskプレスリリース
http://www2.reprintsdesk.com/News/PressReleaseDetail.aspxprid=112

・弊社Reprints Deskサイト
http://www.usaco.co.jp/products/reprintsdesk/index.html

PorticoとPNAS,保存協定締結

電子学術コンテンツをアーカイブし,永続的なアクセス保証をミッションとするPorticoは3月12日,米国科学アカデミー紀要(PNAS :Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)の保存協定を締結したと発表しました。

 この契約により,研究者や学生などが将来に渡って同誌の電子ジャーナルアーカイブを利用出来るようになります。

・Porticoホームページ
http://www.portico.org/digital-preservation/

・PNAS ホームページ
http://www.pnas.org/

・Proceedings of the National Academy of Sciences to be preserved with Portico
http://www.portico.org/digital-preservation/news-events/news/general-news/proceedings-of-the-national-academy-of-sciences-to-be-preserved-with-portico

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