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USACO News:詳細

2015/08/31:第264号 掲載後査読の役割
 

掲載後査読の役割

  学術出版において,論文掲載後の査読(post-publication peer review, 以下PPPR)は出版モデルの一つとして近年定着しつつある。英国逐次刊行物グループ(UKSG)のInsights誌に掲載された”Post-publication peer review, in all its guises, is here to stay”という記事にPPPRの現状と役割,課題がまとめられている。

  論文出版後にその評価や内容に関する討議が行われること自体は学術活動の基本的な営みとして文書や口頭を通して行われてきており,PPPRの概念自体は新しいものではない。しかし,研究総量の増加と流通の電子化により,議論と評価する場が私的なフォーラムからインターネットへと移行し始めている。

  同稿ではPPPRを従来の掲載前査読を代替えするPrimaryと,補完するSecondaryに大別している。
  Primary PPPRは,学術論文が主にオンラインで出版されるようになり,スピード,透明性,コストの面で時代に合ったモデルとして登場した。代表例のF1000ResearchはPPPRモデルを利用した著者主導の出版プラットフォームで,論文は編集チーム内部の迅速なチェック後に査読待ち状態で出版され,その後に正式な査読が開始される。査読者のレポートが届くと,査読者の名前と所属,レポートが論文と一緒に出版され読者はすべてのレビューを閲覧することができる。

  Secondary PPPRは,従来の査読後出版された論文が出版後に別途受ける評価である。今までの少人数による査読では不備の発見や建設的な批判,本来の価値の認識が不十分な場合があるため,出版後の査読で恩恵を受ける可能性がある。これらは出版者が提供するコメント機能や外部の独立したブログやソーシャルメディアを通じて行うことができる。最近,出版後に議論することを目的とした新しいプラットフォームが開発されてきた。例えばOpen Review,PubPeer,PubMed Commonsなどで,これらは各プラットフォーム上での意見交換を促進し,そのやり取りをデータベース化し保存する。

  PPPRにとっての最大の課題として学術界の"Publish or Perish"という文化を挙げている。研究者は職の確保と昇進のため,次々に論文を出版し続けなければならないというプレッシャーを抱えている。そのため一度論文が出版されれば,その研究は完了し次に移る。研究者の抱える仕事量が多いため,貢献が認められにくいPPPRに参加する動機は得づらい。PPPRがもっと広く採用されるためには出版が研究成果の質を保証する最後のステップという概念を改め,バージョンコントロールを取り入れた動的な論文出版モデルを出版者が紹介する必要ある。F1000ResearchのPPPRモデルはバージョン管理を根幹に据え,出版されたすべての論文は決して完了しない。PPPRはどの段階でも発生し,論文に寄せられたすべての査読とコメントに応じて論文著者はいつでも論文を更新することができる。

  別の課題としてPPPRの参加を増やすための具体的な報奨が欠けていることを指摘している。査読はしばしば論文を改良するが,栄誉を受けるのは著者で査読者の貢献は取り上げられない。PPPRの文化を促進するためには,学術コミュニティが関わる意味が見出せるインセンティブが存在し,研究者の評価に関連させる必要がある。また,PPPRが公開されることにより個人の貢献が認知されやすくなるが,逆に,若手研究者が年長者を批判する場合にその後の報復を心配する向きもある。科学的な批判に対する価値の認識と理解が必要とされる。

  記事の著者,Michael MarkieはF1000Researchに従事し,自らPPPRを推進する立場ではあるが,PPPRが学術成果の質向上とコミュニケーションを改善する可能性を秘めていることは疑いなく,プラットフォームの進化が後押しできる部分も大きい。今後の進展を見守りたい。

・Michael Markie ”Post-publication peer review, in all its guises, is here to stay" http://insights.uksg.org/articles/10.1629/uksg.245/ ,(accessed 2015-8-31)

2016年:外国雑誌価格動向

  2016年の外国雑誌予約シーズンを前に,現時点で判明している主要出版者別の価格動向(外貨ベース)を報告します。タイトル選定,予算計画の参考資料としてご利用ください。

 ◇American Diabetes Association…値上なし
 ◇American Physiological Society…5%
 ◆American Psychiatric Association Publishing (※1)…6%
 ◆American Roentgen Ray Society…4%
 ◇American Society for Microbiology (※2)…4%
 ◇American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics…1%
 ◆American Society of Clinical Oncology (※3)…3%
 ◇Journal of Immunology…3%
 ◆National Academy of Sciences (PNAS)…4%
 ◇Oxford University Press 【GBP】…5%
 ◇Radiological Society of North America…4%
 ◇The Bone & Joint Journal (旧JBJS British Vol.)…7%

(※1) 2015年7月よりAmerican Psychiatric Publishingから機関名が変わりました。
(※2) American Society for Microbiology
2016年より下記5タイトルがPrint Onlyが廃止され,Online Onlyのみとなります
Applied and Environmental Microbiology, Infection and Immunity, Journal of Bacteriology, Microbiology and Molecular Biology Reviews, Molecular and Cellular Biology
(※3) Journal of Oncology Practiceの価格がTier制になります。

◆印は弊社の総代理店誌です。
USD 以外の通貨での取扱となる出版機関は,機関名の右に【通貨】を表示しました。

【ご注意】
タイトルを複数提供する出版機関については価格変動率の平均値となります。目安としてご参照ください。
また,各種コンソーシアム等の価格変動率は本資料と異なる場合がございます。提案書もしくは取扱代理店へのご確認をお願いいたします。

Web of ScienceとORCIDの連携をさらに強化

 トムソン・ロイターはWeb of Science v5.18を2015年7月26日にリリースしました。これにより,Web of ScienceとORCIDの連携がさらに強化されました。

 今回のリリースで,ResearcherIDを利用していないORCIDユーザーのORCID IDもWeb of Scienceのレコード上に表示されるようになり,検索できるようになりました。これにより,新たに約9万のORCID IDがWeb of Scienceに追加され,150万以上のレコードがアップデートされています。さらに,今後新たにORCIDに登録された情報は毎月トムソン・ロイターに提供され,Web of Scienceに反映されます。

・Web of Science release notes V5.18
http://wokinfo.com/media/pdf/wos_release_518.pdf
・カレントアウェアネス「Web of Science、ORCIDとの連携をさらに強化」
http://current.ndl.go.jp/node/29064
・弊社トムソン・ロイターサイト
http://www.usaco.co.jp/products/isi/index.html

Reprints Deskインターフェースリニューアルのお知らせ

  学術文献を中心とした資料をPDFファイルで提供するドキュメントデリバリーサービスReprints Deskは,オリジナルインターフェース”Article Galaxy”のリニューアルを実施しました。今回のリニューアルでは主にオーダー画面の機能が強化されています。

変更点① 文献を同定するための識別子であるDOIやPubMed IDを入力することで文献情報を自動取得できるようになりました。

変更点② 文献の概算価格,オーダーする文献を収録する雑誌の購読有無(事前に設定が必要),クイックダウンロード(ブラウザ上でPDFをダウンロード)の可否をオーダー前に確認できます。

  詳細につきましては弊社ホームページをご参照ください。 なお,Reprints Deskは9月にもリニューアルを予定しており,オーダー画面の更なる機能強化や,新しい文献レンタルサービスのリリースなどが行われる見込みです。

・弊社Reprints Deskホームページ http://www.usaco.co.jp/lancelot/common_files/images/public/ReprintsDeskOrderFormRenewal.pdf

図書館総合展フォーラム:JSTOR

  弊社は,株式会社紀伊國屋書店様と合同で第17回図書館総合展においてJSTORによるフォーラムを開催します。

・概要: JSTORが全世界規模で行った導入機関における利用実績データの分析結果に基づくコレクションデベロップメントに役立つ知見や、契約外コンテンツへのアクセスデータ(turnaway)の分析集計、ディスカバリーサービスなどにより利用者へのコンテンツ誘導が効果的に行われているかを示すデータを発表します。 また、JSTORが提案するeBooksのDemand Driven Acquisition (DDA)モデルの紹介をします。

・タイトル:Analyzing Usage Data and Purchasing Models to Aid in Library Collection Development Decisions ・日程:2015年11月11日(水) 13:00-14:30 ・会場:パシフィコ横浜  ・講師:John Lenahan氏(JSTOR, Associate Vice President of Institutional Participation and Strategic Partnerships)逐次通訳付き(英→日)

詳細が決まり次第、改めてお知らせします。

展示・セミナーのご案内
日時 展示・セミナー名 会場
2015年9月2日(水)

日本医学図書館協会/日本薬学図書館協議会 電子ジャーナル・コンソーシアム説明会

関東地区:パレスサイドビル2階 マイナビルームS
2015年9月10日(木)~9月11日(金)

大学図書館コンソーシアム連合 平成27年版元提案説明会

一橋大学 一橋講堂,中会議場(学術総合センター 2階)
2015年10月8日(木)~10月10日(土)

日本癌学会学術総会

名古屋国際会議場

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