2018年1月にDigital Science社がDimensionsを新しいコンセプトの研究ディスカバリー・分析プラットフォームとしてリリースした。Dimensionsは元々2014年に助成金データベースとしてスタートしたが,今回,研究者,大学,研究助成機関,学術出版者など様々なステークホルダーの用途を考慮したサービスとして生まれ変わった。
検索の対象は,論文や書籍など8,900万件の出版物の情報,3,400万件の特許情報,約1兆2,000億ドル相当の360万件の研究助成情報,38万件の臨床試験の情報,合計すると1億2,800万件におよび,研究論文が出版される前と後をカバーする。それらのコンテンツは40億のリンクで繋がれ,8億6,000万件以上の引用情報,研究評価指標,オルトメトリクスも収録されている。
開発には,Digital Scienceのポートフォリオ企業6社(ReadCube, Altmetric, Figshare, Symplectic, DS Consultancy, ÜberResearch)のほかに,大学や英ウェルカム・トラストなど100以上の機関が協力し,広く英知を集める体制が取られている。 現在も希望すれば開発パートナープログラムに申し込むことができる。
提供形態としてフリーミアムモデルを採用し,基本的なサービスの個人利用は無料で,機能拡張された2種類の機関購読版に年間料金が発生する。
Dimensions(無料)では,8,900万の出版物の検索,1,100万件のオープンアクセスへワンクリックでアクセス,2,000万人以上の研究者情報の検索,検索式の登録と再実行,データの集約と視覚化,引用ベースの指標とオルトメトリクスが提供される。
大学・研究機関向けのDimensions Plusでは無料版の全機能に加え,全てのコンテンツタイプの横断検索とフィルターによる絞り込み,購読誌へのワンクリックアクセス,他のシステムとの連携のためのAPI が提供される。
研究助成機関や出版社向けのDimensions Analyticsでは,Plusに加え,全データと高度なデータ分析,レビューアの同定ツール,リポート機能,機械学習を取り入れた研究分類システムなどが提供される。
論文の閲覧にはDigital Science傘下のReadCubeが使われ,Dimensionsで文献検索を開始し,ReadCubeで文献の収集・管理・保存までがシームレスにできる。
幅広いコンテンツを収録しているため,データキュレーションの質では今後の評価が待たれるところだが,引用データベースとして先行するサービスが収録していないフルテキストや,助成金情報,特許,オルトメトリクスなどの論文出版前後の情報まで含めた調査が同一プラットフォーム内でできる点は強みになりそうだ。
無料で提供されるDimensionsが研究者にどのように受け入れられ,連動するReadCubeと合わせ文献に関わるワークフローをどう効率化するか,従来からのサービスとどう競合していくのか,学術出版のエコシステムが今後どのように変化するのか注目したい。
<参考>
・Dimensions
https://app.dimensions.ai/discover/publication
・Dimensions From Digital Science Launches Today, New Research Discovery Platform Offers Both Free and Fee-Based Services – Library Journal誌
http://www.infodocket.com/2018/01/15/dimensions-from-digital-science-launches-today-new-research-discovery-platform-offers-both-free-and-fee-based-services/
・A New Citation Database Launches Today: Digital Science’s Dimensions – The Scholarly Kitchen
https://scholarlykitchen.sspnet.org/2018/01/15/new-citation-database-dimensions/