海賊版論文公開サイトの出現で,ネット上のセキュリティーに関する出版社の関心は高まっている。特に,不正ダウンロードや盗用から自機関のコンテンツを守ることは重要な課題だ。英オックスフォードと米ボストンに拠点を置くPublisher Solutions International社(PSI)は,コンサルタント会社として,以前より個人購読価格や会員価格での機関利用を摘発するサービスなどを提供してきたが,近年では,電子コンテンツの不正利用対策にビジネスの軸足を移してきている。
PSIのIPアドレス監査サービスは,大手出版社40以上から2000万のIPアドレス情報を取得・統合した知識ベースを基にし,出版社と相互にデータの照合を行うとともにインターネット上で利用される識別情報の割り当てや管理などを行なうIANA(Internet Assigned Numbers Authority)と連携し精度を向上させているとしている。
電子ジャーナルの機関購読は多くの場合,IPアドレス認証によるサイトライセンス契約になっているが,同社によると,出版社が登録している顧客のIPアドレス情報は平均で58%不正確だという。記載ミスや組織変更によるアドレスの変更が不完全な場合や故意によるものなどを原因として挙げている。
PSIのサービスは出版社が認証設定に使っているIPアドレスを確認するほか,知識ベースと実際の利用ログを組合せて分析することで,不正利用,誤用の同定や,契約に含まれていないサイト,例えば子会社などの関連機関からのアクセス有無などを割り出し,詳細レポートや改善提案をする。また,ギャップ分析などの販売促進支援を含めた総合的なサービスも提供している。
PSIは,この7月にThe IP Registryと呼ばれるサイトを公開し,購読機関向けのサービスも開始した。不正確なアドレス情報やレンジの重複で,IPレンジが広すぎタダ乗り利用者を抱えることなどで,利用実績データが実態を反映しない問題の解決を目指している。購読機関は,同サイトに機関登録し,管理者ログインアカウントを取得すれば自機関のIP情報の確認と更新ができる。PSIは同サイトに既に約6万機関のデータを保有しているとしているが,もし知識ベースに自機関のファイルが見当たらない場合は追加することも可能だ。
このイニシアティブに参加する出版社は,手動,またはAPIを使い,IP RegistryのIP情報を取得する。これによりIP情報管理における,購読機関・出版社双方の作業が効率化できると謳っている。このサイトは出版社からは規模に応じた年間利用料を課金するが,購読機関は無料となっている。
Publisher Solutions International
http://www.publishersolutionsint.com/
The IP Registry
http://theipregistry.org/publishers/