本文へスキップします。

H1

ユサコニュース詳細

USACO News:詳細

2005/03/31:第150号英国のオープンアクセス事情:JISCが機関リポジトリプロジェクトの公募を開始
 

英国のオープンアクセス事情:JISCが機関リポジトリプロジェクトの公募を開始
英国の合同情報システム委員会(Joint Information Systems Committee:
JISC)は,英国の高等教育機関に対し,機関リポジトリ構築におけるプロ
ジェクトの一般公募を開始した。

 当公募では,機関リポジトリ運営における諸問題を顕在化させ,既存の
運営システムなどを検証することで構築・運営のガイドラインを作成する
ことを主な目的としており,登録データの品質問題やリポジトリ利用者に
対する要求事項など,機関リポジトリに関するあらゆるプロジェクトを対象
としている。JISCは,採用されたプロジェクトに対して最長2年間にわたる
資金援助を保障しており,プロジェクト案の提出期限を本年4月7日と定めて
いる。

 JISCはすでに,FAIR(Focus on Access to Institutional Resources)
やSHERPA(Securing a Hybrid Environment for Research Preservation
and Access)などの機関リポジトリプロジェクトを推進しており,メタデータ
通信プロトコルであるOAI-PMHの研究や,出版社の著作権問題などに取り組んで
きた。今回の公募により,機関リポジトリ運営における,より実践的な問題に
対処し始めたといえる。

 英国では昨年より,機関リポジトリ構築に向けた活動が急速に繰り広げ
られている。英国下院科学技術委員会は昨年7月,「公的資金を得て行われた
研究はすべて公開されるべきである」との立場から「Scientific Publications:
Free for all」と題した報告書を発表した。当報告書では,「英国の高等
教育機関は機関リポジトリを設立して自機関の出版物をオンラインで無料アク
セスさせること」,そして「政府は,公的資金が使われた研究のすべての論文を
リポジトリに1部を寄託させるべきである」と勧告している。また,サザンプトン
大学は昨年12月,機関リポジトリを研究活動インフラの中心に位置付け,英国で
初めてJISCの試験的プロジェクトから独立し,機関リポジトリの実践的な運用を
開始した。なお同大学は,機関リポジトリ構築システムであるEPrintsの開発
機関としても知られている。

 このように機関リポジトリを推進する活動がさかんに行われているが,「出版
論文が無料で公開されることに対して危機感を抱いている商業出版社をどのように
納得させるのか」,また「研究者によるリポジトリへの論文登録を,誰がどのように
義務付けるのか」など,解決されるべき課題も多く残されている。JISCが新たに
プロジェクトを公募したことで,このような機関リポジトリ運営上の問題に対して
どのような解決策が見出されていくのか注目される。

<参考資料>
・JISCホームページ "JISC Circular 3/05: Call for Projects in Digital
Repositories":
http://www.jisc.ac.uk/funding_circular3_05.html

・SHERPAプロジェクトホームページ:
http://www.sherpa.ac.uk/

・FAIRプロジェクトホームページ
http://www.jisc.ac.uk/index.cfmname=programme_fair

・サザンプトン大学ホームページ "University of Southampton to provide
free access to academic research"
http://www.ecs.soton.ac.uk/news/667

・"情報界のトピックス"情報管理 Vol.47, No.6, (2004), 445-448

・"情報界のトピックス"情報管理 Vol.47, No.12, (2004), 849-851

ユサコニュース一覧に戻る