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USACO News:詳細

2005/11/30:第158号ERM(Electronic Resource Management):最近の動向
 

ERM(Electronic Resource Management):最近の動向
電子ジャーナルやデータベースなど,図書館が提供する電子情報資源を一元
的に管理する方法,すなわちElectronic Resource Management(ERM)に
ついては,米国の図書館や図書館システム開発ベンダーなどで構成される
コンソーシアム,Digital Library Federation(DLF)がElectronic Resource
Management Initiative(ERMI;電子情報資源管理イニシアチブ)と称する
プロジェクトを発足させ,2002年,スタンダードの作成に着手した(本誌第140
号参照)。その後,ワシントン大学のティモシー・ジュエル氏を中心とした
DLF/ERMIのメンバーは2004年8月,約2年に及ぶ活動内容をまとめた活動
報告書を提出している。

Ex Libris社はDLF/ERMIの活動報告書提出から1年を経た本年9月,この
活動報告書を開発方針として本格的に採用したElectronic Resource
Management System(ERMS;電子情報資源管理システム)として,Verdeを
リリースした(本誌本号参照)。

ERMSが担う重要な機能として,図書館とベンダー間でのライセンス情報
および利用統計情報の共有が挙げられる。この2つの領域については,DLF/ERMI
の活動報告書提出後も,EDItEUR,COUNTER(後述)などを中心に,データ交換
フォーマットの策定を目指した努力が続けられている。

書籍や雑誌業界の電子商取引や標準化を進めている国際団体であるEDItEUR
は,ONIXと称するXMLスキーマを策定し,すでにオンライン書店が書籍の電子
商取引に採用している(ONIX for Books)。EDItEURは,新たに雑誌の購読情報
や所蔵情報の交換を目的としたONIX for Serialsの策定を目指し,米国情報
標準化機構(NISO)との間で作業部会を設けた。すでに,この作業部会はSerials
Products and Subscriptions(SPS),Serials Online Holdings(SOH),Serials
Release Notification(SRN)と称する3種類のアプリケーションメッセージを
ベータリリースしている。さらに作業部会では本年8月,ライセンス情報流通
のためのXMLスキーマであるONIX for Licensing Termsの草案を発表した。

EDItEURの動きと平行して,前述のDLF/ERMIでもライセンス情報流通のため
のフォーマット策定を目的としたイニシアチブを始動させている。EDItEURと
DLF/ERMIは異なる構成要員およびスケジュールのもとで活動しているため,
これまで活動を共にすることはなかったが,両者は今後,共同で作業部会を
設け,ライセンス情報流通のための共通のフォーマット策定を目的とした活動
を行っていく予定である。

オンライン情報サービスの利用統計フォーマットの国際的統一化を推進して
いるプロジェクト,COUNTER(Counting Online Usage of Networked Electronic
Resources)は,国際標準仕様「Code of Practice Release 1」を発表し,
すでに約40の大手出版社やベンダーの多くが採用している(現行のRelease 1
に取って代わり,Release 2が2006年1月から運用される。本誌第154号参照)。
COUNTER準拠の利用統計については,フォーマットは統一されているものの,
その提供形態が出版社やベンダーごとに異なる点が指摘されていた。

本年7月,DLF/ERMIおよび図書館システム開発ベンダーが会合を持ち,ERMS
から,大手出版社やベンダーが提供するCOUNTER準拠の利用統計を自動的に
取得することを目的とした標準プロトコルの策定について協議を行った。
その結果,Webサービスを利用することが大勢にとって最善であるとの決定が
なされ,その後NISOに対しプロトコルの提案がなされた。この提案を受けてNISOは,
Standardized Usage Statistics Harvesting Initiative(SUSHI)と呼ばれるイニシアチブを
始動させ,2006年初頭の仕様案公開を目指し,現在機能検証を行っている。

データ交換フォーマットの策定など,一連のERMによる標準化により,ERMSを
導入した図書館とベンダー間でのライセンス情報および利用統計情報の共有が
著しく簡素化されることが期待される。

<参考資料>
・Digital Library Federation: ERM Initiativeホームページ
http://www.diglib.org/standards/dlf-erm02.htm
・EDItEURホームページ
http://www.editeur.org/
・Standardized Usage Statistics Harvesting Initiative(SUSHI)ホームページ
http://www.library.cornell.edu/cts/elicensestudy/ermi2/

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