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USACO News:詳細

2018/11/30:第300号 ダークアーカイブの近況
 

ダークアーカイブの近況

 今日,学術的なコンテンツの出版と利用面においては電子が主流となり,電子版のみが出版される資料も増えている。これらの多くがネット上のサーバから提供されるが,メディアやハードウェアの障害,自然災害,出版者の倒産などの要因でデータを失ったりサービスが停止したりする可能性は十分にある。また,コンテンツを閲覧する際に,記録方式やツールの仕様変更のため正しく再現できなくなることも実際に起きている。 

 このような電子出版の永続的な利用を脅かす問題は電子ジャーナル普及における早い段階から予想され,その解決のため今までいくつかのプロジェクトが取り組まれてきた。中でも10年以上の運用実績を重ねてきたCLOCKSSとPorticoは学術コミュニティーの中で認知度が高く定着している。双方とも正規サービスが利用できなくなるトリガーイベントが発生した場合にアクセスを提供するダークアーカイブである。 

CLOCKSS
 米スタンフォード大学が開発したコンテンツの収集,保存,提供のためのソフトウェアLOCKSS(Lots of Copies Keep Stuff Safe)を技術基盤としたアーカイブプロジェクト。2008年から非営利組織として参加する図書館と出版者が共同で運営している。2018年11月現在,257の出版機関,315の図書館(うち105は日本の学術機関)が参加し,雑誌25,350タイトルからの論文が約3,000万点,書籍75,000点がアーカイブされている。参加出版者には年間費用と論文や書籍点数に応じた従量制の課金がある。図書館は支援者として位置づけられ,事業に貢献するための協賛金を負担する形態をとっている。資料の保存は世界各地域の著名な12の学術機関をアーカイブ・ノードとして実施する分散方式を採っていて,アジアにおいては国立情報学研究所(NII)がその役割を担っている。
 CLOCKSSは2018年11月5日付で,同プロジェクトが万が一終了した場合に12ノードのうち,意図的に,米・英・独・加の地理的にも分散した異なる4つ国から選ばれたスタンフォード大学,エディンバラ大学,フンボルト大学,アルバータ大学がCLOCKSSの役割を引き継ぎ,収集・保存・公開の作業を継続するという事業継承プランを発表した。CLOCKSSは,北米研究図書館センター(CRL)が2013年9月から2014年5月までに行ったリポジトリとしての監査で高い評価を受けたが,課題として正式な継承プランがないことを指摘されていた。今回この点を補ったことで長期運用における信頼性をより高めた。 

Portico
 Porticoは,2002年にJSTORがアンドリュー・メロン財団の助成を受けて開始した電子アーカイビングプロジェクトを前身とし,2005年にJSTORと非営利法人のIthakaのサポートのもとに発足した。現在は,JSTORとともにIthakaが提供する4つのサービスの一つとなっている。2018年11月現在で出版社584から雑誌31,499タイトル,電子書籍 1,328,687,コレクション 199,アイテム数では9,300万点をアーカイブし,1,026図書館が導入している。順調な拡大が続く中で,アーカイブのサイズが2006年当時の1,600倍に成長した。2016年に,11年間におよぶソフトとハード両面における進化を享受するために再投資が必要との認識から2年間の大規模改修プロジェクトをスタートし2018年9月に作業を完了した。これにより,高速化と,コンテンツプロセスと管理能力の向上,ストレージの増強(アーカイブのサイズにして100%以上),管理の自動化による生産性の向上などを実現した。
 国内の図書館での導入実績はないが,J-STAGEに登載されている日本の学協会等が発行する約2,700誌のうち,2,105誌がPorticoに参加することになり2018年11月20日から運用が開始されている。 

 学術的な資料が科学の記録として果たしてきた役割を伝承するためにも,永続的なアクセスを提供するダークアーカイブは極めて重要な存在だ。実際,これまでトリガーイベントが発生しCLOCKSSでは53誌,Porticoでは118誌が提供されている。今後も多様性,確実性,持続性を高めることが肝要だろう。そのためにもコミュニティーによるサポートと,ニーズの変化,出版や技術の進歩に合わせた弛まぬ更新が求められる。


<参考>
​・CLOCKSS:
https://clockss.org/ 

・細川聖二. グローバルなダーク・アーカイブCLOCKSS:学術コミュニティーによる電子ジャーナルの長期的保存への取り組み. 情報管理. 2016, vol.59, no.3, p.156-164:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/59/3/59_156/_pdf 

・守屋文葉. E1117 - CLOCKSSへ日本の大学図書館が参加. カレントアウェアネス-E. 2010.11.18.:
http://current.ndl.go.jp/e1117 

・CLOCKSSへの支援 | JUSTICE:
https://www.nii.ac.jp/content/justice/project/clockss.html 

・Updated Certification Report on CLOCKSS(CRL):
https://www.crl.edu/sites/default/files/attachments/pages/CLOCKSS_Report_2018.pdf 

・Portico:
https://www.portico.org/ 

・The Scholarly Kitchen, The Evolution of Infrastructure: Making a Renewed Investment in Preservation at Portico
https://scholarlykitchen.sspnet.org/2018/10/17/guest-post-the-evolution-of-infrastructure-making-a-renewed-investment-in-preservation-at-portico/ 

・第161号電子ジャーナルアーカイブへの取り組み「Portico」(2006年03月):
 https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=42&dispmid=605 

Microbiology Society:新しいオープンアクセス誌のご案内
 Microbiology Societyの新しいオープンアクセス誌「Access Microbiology」が投稿の受付を開始しました。

 Access Microbiologyは微生物学分野での複製研究,ネガティブな結果,データ管理プランなど,埋もれがちで価値の高い情報を発表,共有する場を提供します。また,バクテリア,ウィルス,真菌など,全ての微生物を様々な角度から研究した情報をカバーします。 
 リリースを記念し,期間限定で論文投稿料(APC)が免除されています。 


<参考>
・Access Microbiologyプレスリリース記事:
https://microbiologysociety.org/news/society-news/introducing-the-societys-newest-journal-access-microbiology.html

・Access Microbiologyホームページ:
http://acmi.microbiologyresearch.org/content/journal/acmi 

PNAS: 新Editor-in-Chief就任のお知らせ

 PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences in The United States of America)を発行しているThe National Academy of Sciences (以下NAS)は,2019年1月1日より新編集長(Editor-in-Chief)にMay R. Berenbaum氏が就任すると発表しました。
 Berenbaum氏は,昆虫学に関する著名な科学論文や書籍の著者であり,気候変動や生物多様性損失など環境問題の権威で,イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の昆虫学の教授を務めています。1994年にNASの一員として選出され,1998年には編集委員の一員となりました。
 「NASは国際的に評価が高く,リーダーシップ性のある優秀なBerenbaum氏を編集長として迎え入れることは非常に幸運なことである。一緒に働くのが楽しみだ」とNASの代表であるMarcia McNutt氏は語っています。
 化学生態学の分野でのリーダー的存在であり,彼女の長きにわたる研究は,昆虫と植物間の進化における競争の生態学的,進化的,生化学的,分子的側面を明らかにし,Berenbaum氏の研究が評価され,2011年には環境科学,環境衛生,エネルギーの分野で功績のあった人に贈られるタイラー賞,2014年にはアメリカ合衆国大統領によって,科学や工学の世界において,その貢献が認められたアメリカ市民に送られるアメリカ国家科学賞(National Medal of Science)を受賞しました。
 「PNASは厳密に査読された重要な科学進歩を象徴する論文を出版するという伝統を維持するのと同時に,世界中の科学的,社会的,文化的な急速な変化を認識,順応していかなければならない」とBerenbaum氏は語っています。



<参考>
・News from the National Academy of Sciences – 2018/10/26:

http://www.nasonline.org/news-and-multimedia/news/Berenbaum-PNAS.html 

・弊社PNASホームページ:
 https://www.usaco.co.jp/product/detail.html?pdid=141

FSG:The Bioanalysis Glossary 第3版ご案内

 Future Science Groupから「The Bioanalysis Glossary 第3版」が発行されました。
 The Bioanalysis Glossaryはバイオアナリシスの初学者から熟練したバイオアナリストまで,信頼のおける用語集として,論文やプレゼンテーション作成時の参考などに活用できるガイドです。
 一般的なバイオアナリシス用語の他,薬物動態や臨床試験,メタボロームなど幅広い分野をカバーし,バイオアナリシスに直接関わる用語,バイオアナリシスへの理解が深まる関連用語を収録しています。 
 第3版では,2016年刊行の第2版より40以上の用語を追加,またバイオアナリストの間でよく使われる方程式を追記するアップデートが行われています。 
 次版が発行されるまで,ウェブ上で無料公開されます。 


<参考>
・The Bioanalysis Glossary 第3版プレスリリース記事:
https://www.future-science-group.com/third-edition-bioanalysis-glossary 

・The Bioanalysis Glossaryホームページ:
https://www.bioanalysis-zone.com/the-bioanalysis-glossary/

国内発の論文要約サービスの紹介

 AIを利用して学術論文の要約を自動生成するサービスPaper Digestが,日本から初めてCatalyst Grantを受賞しました。Catalyst GrantはDigital Science社が将来有望なスタートアップを支援するプログラムで,これまでにfigshareやAuthoreaなどを輩出しています。
 Paper Digest は2018年7月より無料のベータ版が公開され,これまでに80ヶ国以上から2,500人を超えるユーザーに利用されたとのことです。

 このサービスは東京工業大学出身の高野泰朋氏とCristian Mejia氏らがポスドクをしながらプライベートの開発をする中で生まれました。同氏らは科学技術の動向把握に関するコンサルティングを提供するために株式会社JIYU Laboratoriesを起業しています。前・ORCIDアジア太平洋地区ディレクターの宮入暢子氏を戦略アドバイザーに迎え,オープンで機械可読なデータを利活用するグローバルなSTMサービスを目指すとのことです。


<参考>
・Paper Digest:
https://www.paper-digest.com/ 

・Catalyst Grant(Digital Science社):

https://www.digital-science.com/investment/catalyst-grant/ 

・Catalyst Grant受賞記事(Digital Science社):
https://www.digital-science.com/press-releases/digital-science-announces-new-catalyst-grant-winners-2/ 

・Japan TimesのPaper Digest紹介記事:
https://www.japantimes.co.jp/news/2018/10/24/business/tech/tokyo-researchers-paper-digest-makes-academia-jargon-cinch/

・ JIYU Laboratories:
https://jiyu-labs.com/

EndNote無料オンラインセミナーのお知らせ

 EndNoteの無料オンラインセミナーを下記の通り開催いたします。場所を問わず気軽に参加できるオンラインセミナーをぜひご利用ください。

▼オンラインセミナー詳細・お申し込みはこちら
 http://www2.usaco.co.jp/shop/pages/en_nvivo_webinar.aspx

● 開催概要:
日時:
 2018年12月13日(木)17:00 - 18:00
 2018年12月26日(水)17:00 - 18:00

内容:EndNoteを使い始めよう!
(1) 製品インターフェース紹介・用語解説 

(2) EndNoteと言えばコレ! - 投稿規定に合わせた参考文献リスト自動作成 -
 2-1.EndNoteからWord上に文献を引用挿入する
 2-2.投稿するジャーナルのフォーマットに変更する
 2-3.投稿先のフォーマットがない時は?
 2-4.Word上から引用挿入した参考文献を削除する

(3) EndNoteに文献を保存 - PDF,PubMedから文献情報を取り込む -
 3-1.新しくライブラリを作成する
 3-2.PDFから取り込む
 3-3.PDFからの取り込みがうまくいかない時は?
 3-4.PubMedから取り込む 

(4) EndNoteでPDFをカンタン整理 - PDF自動ダウンロード,PDF添付 -
 4-1.取り込んだ文献情報のPDFを自動ダウンロードする
 4-2.PDF自動ダウンロード機能を使う時の注意点
 4-3.手動でPDFを添付する 

  最新版EndNote X9(Windows)を使って,基本操作(文献収集・管理,論文作成支援)をご説明します。これからEndNoteを使い始める方や,基本操作に慣れていない方にオススメです。 

▼オンラインセミナーに関するお問い合わせはこちら
 ユサコ株式会社 アカデミア事業部 営業部 EC Sales
 shop@usaco.co.jp 

皆様のご参加をお待ちしております。

展示・セミナーのご案内
日時 展示・セミナー名 会場
2019年1月11日(金)~1月13日(日)

第22回日本病態栄養学会年次学術集会

パシフィコ横浜
2019年2月12日(火)~2月14日(木)

第10回JBFシンポジウム

パシフィコ横浜
2019年3月21日(木)~3月23日(土)

第18回日本再生医療学会総会

神戸国際会議場・神戸国際展示場
2019年5月23日(木)~5月25日(土)

第62回日本糖尿病学会年次学術集会

仙台国際センター他
2019年6月28日(金)~6月29日(土)

第67回日本臨床視覚電気生理学会

KFC Hall & Rooms/東京都墨田区

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