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2006/02/28:第160号米国でのオープンアクセス義務化の動向
 

米国でのオープンアクセス義務化の動向
2005年12月,米国上院議会に「公的に助成を受けた医学研究成果をPubMed Centralに
デポジットしてオープンアクセスとすることを義務化する」内容を含む法案(通称CURES法案)が
提出された。この法案によると,基礎研究の成果を臨床応用することを主要な目的とする新機関,
American Center for Curesが米国国立衛生研究所(National Institute of Health;NIH)内に
設置される。
 オープンアクセスの義務化の対象は米国保健省(Department of Health and Human Services)の
助成を受ける研究であり,NIHやAmerican Center for Curesをはじめ広範囲の機関が含まれる。

 過去にもこれに類似した動きとしてNIHのパブリックアクセスポリシー(本誌第146号トピックス参照)
があったが,このポリシーは最終的には学術出版社への譲歩により当初の理想から大きく後退し,
1年以内にPubMed Centralにデポジットすることを推奨するという無難な内容で,2005年5月から
実施されている。
 今回のCURES法案では猶予期間は6カ月であり,さらに,従わなかった場合には将来の助成を
打ち切る法的根拠となりうるとまで言及されている。

 また,NIHパブリックアクセスポリシーと異なる点として,CURES法案では論文著者が
オープンアクセス雑誌に投稿する際の投稿料に対しては支援しない。さらに法案では,
米国で実施されたNIHによる臨床試験を,オープンアクセスのリポジトリとデータベースに登録する
ことを求めている。

 CURES法案は英国ウェルカム財団の計画(本誌第153号トピックス参照)とは異なり,対象が
医学分野だけに限定されているとはいえ,可決されればNIHパブリックアクセスポリシーの当初の
提案をも超えるインパクトとなる。
 学術出版社からは再度強く反対の声が挙がることが予想され,法案の行方が注目される。

<参考資料>
・CURES法案
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/zd109:s.02104:
・SPARC Open Access Newsletter
http://www.earlham.edu/~peters/fos/newsletter/01-02-06.htm#cures
・本誌第146号【トピックス】
 「NIHのオープンアクセス提案:学術出版業界に大きな波紋」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=25&dispmid=605
・本誌第153号【トピックス】
 「英国ウェルカム財団,支援研究論文のオープンアクセス化を義務付け」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=33&dispmid=605

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