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2006/11/30:第169号大手出版社の動向:トムソンサイエンティフィックとシュプリンガー
 

大手出版社の動向:トムソンサイエンティフィックとシュプリンガー
学術出版業界では,しばらく目立った買収や合併のニュースを聞かなかったが,この数ヶ月に
発信されたプレスリリースから注目に値する話題を2つ紹介したい。

 本年8月末にトムソンサイエンティフィックはScholarOneを買収したことを明らかにした。ScholarOneは
学術雑誌の査読・編集をオンライン上で行うためのサービスとして,主要1,000誌以上に採用されている
「Manuscript Central」を開発・提供してきたことで著名である。同社が傘下に加わったことで,トムソン
サイエンティフィックは自社による電子ジャーナルの出版以外の学術情報の出版・流通サイクルに
おける,ほとんどフェーズをカバーすることになった。すでにトムソンサイエンティフィックの製品に
なっている「EndNote」は論文を投稿する際に役立つツールとして多くの研究者に使われ,それを
受ける出版機関側のオンラインピアレビュー作業には世界標準になりつつあるManuscript Centralが
活用される。刊行された論文の検索や調査のために「Web of Science」を初めとするデータベース
サービスが研究機関に提供され,各利用者がダウンロードした論文やその書誌事項の管理にも
EndNoteが活躍する。このような一連のフローを考えると,ScholarOneの獲得が極めて一貫した
政策であることが理解できる。

 一方でトムソンは,トムソンサイエンティフィックの姉妹会社であるトムソンラーニングを来年初旬に
売却する方針であることを発表している。ここでも,長期的なビジョンに則り経営の選択と集中を推し
進めていこうとする確固とした姿勢が伺える。

 2件目は,9月始めに発表されたシュプリンガーによるHumana Pressの買収である。Humana Pressは
医学生物科学分野における主要出版社の一つでジャーナルを25,書籍を約1,000タイトル出版
している。コンテンツを充実させることでSTM分野で第2位の出版社としてさらに地盤を強固にしようと
する方向性が読み取れる。現在シュプリンガーのCEOを務めるDerk Haank氏は,2004年の就任前は
エルゼビア・サイエンスの会長であった。アカデミック・プレス(当時)が所属していたハーコート・
ジェネラルの買収などに関与した人物である。

<参考URL>
・ScholarOneの買収
 http://www.thomsonscientific.jp/news/press/scholarone/
・トムソンラーニングの売却
 http://www.thomson.com/content/pr/corp/corp_news/139161
・シュプリンガーのHumana Press買収
 http://www.springer-sbm.de/index.phpid=291&L=0&backPID=291&tx_tnc_news=2708

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