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USACO News:詳細

2009/07/31:第197号 出版の電子化とオンデマンド印刷
 

出版の電子化とオンデマンド印刷
消費者が必要とする書籍を一冊単位で印刷・供給するオンデマンド印刷(POD:Print on Demand)は,発行部数の少ない学術専門書の継続発行や絶版本などの再発行に適しており,とくに出版者の印刷にかかる投資や在庫管理のコスト削減に有効とされている。このオンデマンド印刷が,近年,そのマーケットを拡大している。
 2009年5月19日付Bowker社のプレスリリースによると2008年の米国の総書籍出版数は56万626タイトル(暫定)で,そのうちオンデマンド印刷と短期間のみの出版を合わせたものが28万5,394タイトル(暫定)であり,総出版数の半数を占めることが予測された。同社によるとこの数値は2007年比132%増(2006年比774%増)という。

 オンデマンド印刷は書籍の電子化と共に発展してきた。Lightning Source社は,印刷物の提供,販売など,受注から入金管理までの一連の作業を行うオンデマンド印刷の大手である。Taylor & Francis,Oxford University Press,John Wiley & Sonsをはじめとする学術出版者を顧客とし,そのオンデマンド印刷を請け負ってきた。Amazon.comは,2006年からすでにオンデマンドサービスを実施しており,2007年にはJohn Wiley & Sons, McGraw-Hill, Springer, Gale, Oxford University Press, Cambridge University Press, SAGE Publicationsなどの大手学術出版と提携して,そのカレント,バックリスト,絶版本,大型活字本などのオンデマンド印刷を開始している。Amazonは同時期に大学・公共図書館の蔵書デジタル化事業にも参入した。最近ではコーネル大学図書館(Cornell University Library)が2009年末までに計80,000タイトル以上の書籍をAmazon.comのオンデマンド印刷システムに追加することを発表したり,ミシガン大学(University of Michigan)が著作権の切れた書籍のオンデマンド再販に関してAmazon.comグループの子会社であるBookSurgeと合意したことなどを発表している。なお,ミシガン大学の提供タイトル数は400,000を超えると計画されており,中には皮肉にもGoogleとの協力でデジタル化された資料を含むとのことである。

 このようなオンデマンド印刷に関する新たな取り組みとしては,Lightning Source社のEspresso Book Machine(EBM)プログラムや,Springer社のMyCopyサービスが挙げられる。
 Espresso Book Machineは,書店や図書館内部に設置され,リクエストされた書籍をその場で印刷・製本・販売することのできる機械設備である。その便利さ,手軽さ,スピードから,書籍のATM(現金自動預け払い機)サービスとも比喩され,米国のタイム誌が発表した2007年最高の発明品の一つにも選ばれた。2009年4月にJohn Wiley & SonsやMcGraw-Hillなどの12の出版者を対象にしたパイロットプログラムが発表され,続いて同年5月には対象出版者をすべてのLightning Source顧客に拡大することが発表された。これにより,利用者はEspressNetと呼ばれるソフトウェアを通じて,最大8,000以上の出版者が提供する100万件以上のコンテンツ*1,Open Content Alliance(OCA)などで提供されるパブリックドメインの書籍100万タイトル以上を利用することが技術的に可能となる。Espresso Book Machineは,ニューヨーク公共図書館,ミシガン大学図書館,アレクサンドリア図書館などの機関にすでに導入されている。
 MyCopyは,Springer社が2009年6月からスタートした新たなオンデマンド印刷サービスである。これにより,Springer社の電子ブックコレクションを購入している,米・カナダの学術図書館利用者は,同社が提供するプラットフォーム上からダイレクトに電子ブックのソフトカバーを注文することができるようになった。対象コンテンツは2005年以降に発行された11,000以上の電子ブック,料金は一律$24.95に設定されている。

 オンデマンド印刷は,出版者にとって在庫管理や流通におけるコスト削減の手段となり,刊行から時間が経過してもなお一定の需要がある「ロングテール」での供給手段や,部数が少ない刊行物の新たなビジネスモデルとなる可能性も秘めている。
 オンデマンド印刷の今後の発展は,出版の電子化が進む中で,冊子の必要性や重要性を量る指針となりそうだ。

*1 各出版者の承認待ちを含む総数

・Bowker社プレス・リリース
http://www.bowker.com/index.php/press-releases/563-bowker-reports-us-book-production-declines-3-in-2008-but-qon-demandq-publishing-more-than-doubles
・Lightning Source社サイト
http://lightningsource.com/
・Lightning Source社プレス・リリース
http://www.lightningsource.com/newslist.aspx
・BookSurge社プレス・リリース
http://www.booksurge.com/content/Release-May_31-_2007.htm
・コーネル大学図書館プレス・リリース
http://news.library.cornell.edu/com/news/PressReleases/Cornell-University-Library-Expands-Print-on-Demand-Offerings.cfm
・ミシガン大学プレス・リリース
http://www.lib.umich.edu/news/stories/agreement_with_amazon_will_make_um_digital_books_widely_available_536.html
・The Espresso BookMachine 2.0製品カタログ
http://www.ondemandbooks.com/EBM_Brochure.pdf
・Springer社MyCopyを開始
http://www.springer.com/e-content/ebooks/my+copySGWID=0-165802-0-0-0


2010年度:外国雑誌価格値上がり動向
 2010年度の外国雑誌予約シーズンを前に,現時点で判明している主要出版機関別の値上げ状況(外貨ベース)を報告します。タイトル選定,予算計画の参考資料としてご利用ください。

◇American College of Physicians ・・・値上げ無し

◇American Chemical Society
<Print>・・・値上げ無し
 ※Print購読の早期継続契約に対し、最大10%の割引があります。
  詳細は弊社までお問い合わせください。

◇American Physiological Society ・・・5%

◆American Society for Cell Biology ・・・3%

◇American Society for Microbiology
<Print>・・・4%
<Online>・・・値上げ無し

◇Annual Reviews・・・値上げ無し

◇American Psychiatric Publishing, Inc.・・・値上げ無し

◆American Society of Clinical Oncology・・・4%

◇Edinburgh University Press・・・5%

◇Institute of Physics Publishing
<Print+Online>・・・5%
 ※2010年より、Online only の購読体系ができます。
   2010年Online only価格は2009年Print+Online価格と同じです。

◆Proceedings of the National Academy of Sciences
<Online>・・・値上げ無し
<Print+Online>・・・3%〜24% (Tierにより異なる)
※2010年より、Print onlyの購読体系は廃止されます。

◇Thieme
<Online>・・・値上げ無し
<Print+Online>・・・値上げ無し

 上記以外の出版社の値上り状況については,情報を入手次第,ご案内いたします。

【注意】
 ◆印は,弊社の総代理店誌です。
 タイトルを複数提供する出版機関については,全タイトルの値上げ率の平均値となります。
あくまで目安としてご参照ください。
NISO:ERM関連のデータと標準規格を再考するワーキンググループを立ち上げ
 2009年7月,米国情報標準化機構(NISO)は,電子情報資源を一元的に管理するERM(Electronic Resource Management)データの標準規格を再考する新たな取り組みを正式に認定したことを発表しました。

 これにより立ち上げられるワーキンググループは,既存のERMIデータ辞書を再考し,ERMIデータ要素を,CORE,SUSHI,ONIX-PLなどの関連する同種の規格プロジェクトに含まれるものにマッピングすることから分析に着手します。また,ベンダー,ERMSを利用する図書館,その他の利害関係者を調査・インタビューする予定です。

 活動報告は2010年4月までにNISOのBusiness Information Topic Committeeに提出され,一般公開される予定です。

・NISOプレス・リリース
http://www.niso.org/news/pr/viewitem_key=03bb22a6899505f48d8e43a45b000bfff0831474
Ex Libris:Primo Centralを発表
 2009年7月9日,Ex Libris社は,同社の次世代図書館ポータルPrimo(プリモ)に,出版者やアグリゲータから提供される論文や電子ブックなどの学術情報をインデックスするための新たな構成要素である,“Primo Central”を導入することを発表しました。2009年末にベータ版のリリースを予定しています。

 Primo Centralの導入により,利用者は,図書館(機関)がコントロールするリソースと国際的な電子コンテンツを同時に検索することが可能になり,検索結果も共通の関連度ランキングによって提供されるようになります。Primoの高いパフォーマンスと関連度ランキングのクオリティもそのまま維持されます。

 EBSCO,IOP Publishing,National Academy of Sciences/PNAS,United States National Library of Medicine/ PubMed,Johns Hopkins University Press/ Project MUSEをはじめとする出版者がすでにPrimo Centralに参加しており,プレス・リリースでは参加出版者数の急速な増加を伝えています。

 Primo導入機関は,2009年7月現在,23カ国180機関を超えています。

・Ex Librisプレス・リリース Primo Centralを発表
http://www.exlibrisgroup.com/default.aspcatid={916AFF5B-CA4A-48FD-AD54-9AD2ADADEB88}&details_type=1&itemid={5CC4B426-1774-4F5B-80DB-25DEB89BC9FD}
・Ex Librisプレス・リリース EBSCO Publishingとのパートナーシップを発表
http://www.exlibrisgroup.com/default.aspcatid={916AFF5B-CA4A-48FD-AD54-9AD2ADADEB88}&details_type=1&itemid={2BC0FD59-A3EC-47E3-9CEE-3377EAC32404}
・本誌191号記事「Ex Libris:Primo導入機関が100を突破」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=74&dispmid=605

NPGとScientific American:事業統合のお知らせ
2009年6月22日付のプレス・リリースで,Macmillan Publishers Ltdの一部門であるScientific Americanと,同じくMacmillan Publishers Ltdの一部門であるNPG:Nature Publishing Groupの事業統合が発表されています。Scientific Americanは,今後NPGの新たな消費者メディア部門(Consumer Media division)の中核を成すことになります。

 現在EBSCOがホストするScientific Americanアーカイブは,2009年第4四半期中にnature.comに移行する予定です。EBSCOによるScientific Americanの提供は2010年5月までとなりますが,アーカイブに関しては,EBSCOhost上で引き続き利用可能予定です。

 Scientific Americanは現在定期刊行されているアメリカ最古の雑誌です。1845年の創刊以来,科学技術の発展に関する独自の洞察を読者に提供し続けてきました。

・NPGプレス・リリース
http://www.nature.com/press_releases/scientificamerican.html

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