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2009/12/28:第202号 電子ブックに関する最近の調査報告
 

電子ブックに関する最近の調査報告
JISC,CIBER,PCGは,それぞれが実施した電子ブックに関する調査結果を2009年後半に公開している。
 JISC*は,電子ブックの利用動向や電子ブックの導入が従来の書籍に与える影響などについて英国の状況を2007年から2009年の2年間調査,PCG*は米国の図書館員230人に電子ブック導入の基本方針や予算,現状から今後の展望などについて,CIBER*は59ヶ国の図書館員835人を対象に近年の図書館予算の動向やより効率的な図書館運営についてアンケートを実施した。これらに報告された電子ブックの利用動向,予算などのトピックを簡単に紹介したい。

 JISCの報告書では,調査対象となった大学生と教員の過半数を超える64.6%が現在電子ブックを利用していると回答している。コンテンツの入手先は,大学図書館(51.9%),オープンウェブ(38.4%),個人購入(3.8%)の順になっている。 電子ブックの使い方については,複数章の要点のみを飛ばし読みするケースが多く(学生53.5%,教員58.6%),本全体を読むケースは少なかった(学生5.5%,教員7.1%)。さらに利用時間については,1ページを読むのに5分以上かけているものはわずか5%にすぎず,85%が1分以内と回答している。また,半数以上の利用者が電子ブックをPCモニタから直接読んで(学生66.9%,教員60.0%)おり,印刷してから読む利用者は少なく(学生5.4%,教員7.4%),モニタと印刷の両方を利用しているとの回答は約3割(学生27.2%,教員32.3%)であった。

 近年の厳しい経済情勢の影響は大きく,このような状況下でのコレクション拡張は図書館にとって試練の時とも言えるが,調査報告からは電子ブックの導入に対する図書館員の前向きな姿勢がうかがえた。PCGの調査によると,回答者の40%は2010年度の電子ブック予算を昨年比と同額,20%は拡大,27%は減少すると見込んでいる。また,CIBERは図書館の全体的な予算の動向を調査しているが,学術図書館の47.5%は2010年度の図書館の予算を昨年度比と同額,39.7%は拡大,12.8%は減少と集計している。全般的に資料費は予算削減の対象にされやすいが,電子ブックは今のところ最も削減リスクが低い資料との結果が出ている。また,半数以上の図書館員がより効率的な図書館運営の手段のひとつとして冊子体からオンラインへのシフトを奨励すると述べている。

 従来の書籍と比較した場合,電子ブックのメリットとしてアクセス性(24時間/7日間)が挙げられる。JISCによると,利用者の63%はキャンパス内から電子ブックにアクセスすると回答しているが,残りの37%はキャンパス外(国内・海外含む)からのリモートアクセスを利用している。貸出の手続や時間制限や場所を問わない利用モデルは支持を得つつある。その他,検索機能,携帯性,環境への配慮,書庫スペース問題の解消,複数同時アクセスなどがメリットとして挙げられている。一方,PCGの報告書ではプラットフォームの一貫性の欠如,動作環境,ファイアーウォール問題,印刷制限,コピー&ペースト機能,同時アクセス数の制限,確立したMARCレコードの欠如とOPACへの対応不足などが不安要素として挙げられている。従来の冊子体から電子媒体への移行については,回答者の93%が正式な移行プランを描けていないという。

 3つの調査結果を見る限り,電子ブックはすでに一定の利用者に利用され,ある程度の安定した予算配分を獲得し,学術図書館において定着・浸透しつつある。
 一般向けの電子ブックやそのリーダーの普及動向なども気になるところだが,冊子による読書行為の代替えになるのか興味は尽きない。


*JISC:英国情報システム合同委員会(Joint Information Systems Committee)
 プロジェクト名:JISC national e-books observatory project
 調査対象:イギリスの大学生・教員,図書館,出版者,アグリゲータ
 調査時期:2007-2009年の2年間
 報告書リリース:2009年11月 

*CIBER:英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの情報行動・研究評価センター
 調査報告書タイトル:The Economic Downturn and Libraries Survey
 調査対象:全世界(59ヶ国)の図書館員835名
 調査時期:2009年9月から10月
 報告書リリース:2009年12月

*PCG:Publishers Communication Group
 調査報告書タイトル:E-books in the academic library market in 2009 Or why is it not easier to turn the page
 調査対象:米国の図書館員230名 (※最近に電子ブックを購入した経験があるもの)
 調査時期:2009年春
 報告書リリース:2009年10月

・JISC national e-books observatory projectレポート
http://www.jiscebooksproject.org/wp-content/JISC-e-books-observatory-final-report-Nov-09.pdf
・PCG2009年度調査レポート
http://www.pcgplus.com/Newsletter/Issue12/EBookVantage.pdf
・CIBER調査レポート(下記URLからリクエスト可)
http://www.ebrary.com/corp/inforequest/survey2009.jsp;jsessionid=CCCHMBEFEOPJ
・CIBER調査レポートに関する日本語の資料をご希望の方は,弊社までお問い合わせください。
応用物理学会:Applied Physics Express無料公開キャンペーンのご案内
社団法人応用物理学会は,レター誌“APEX(Applied Physics Express)”の創刊2周年を記念して,2010年1月から12月までの1年間,Vol.1(2008年)の全論文を無料公開することを発表しました。
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http://apex.ipap.jp
・Applied Physics Express無料公開のアナウンスメント
http://apex.ipap.jp/announcements/index.html

Ovid.:OvidSP lexiconに心理学系シソーラスを搭載
Ovid Technologiesは,同社が提供するOvidSPのlexicon(用語辞書)に,米国心理学会(APA:American Psychological Association)作成の心理学系シソーラス“Thesaurus of Psychological Index Terms”を追加しました。

 Thesaurus of Psychological Index Termsは,APAが提供する心理学系文献データベースPsycINFOや心理学系全文データベースPsycARTICLEsなどの検索時に非常に有効で,OvidSPのBasic Search時に作動するNatural Language Processing(NLP:文章形式の入力による自然語検索
機能)と連携することで,検索用語の拡張,検索再現率の向上,検索ヒット数の増強などを可能に
します。詳細は,Ovid Technologies Japan Officeのホームページhttp://www.ovid.jp/site/images/top/psycLex_FS_JA.pdfをご参照ください。

・Ovid Technologies Japan Office
http://www.ovid.jp/site/index.html
・弊社Ovid紹介ページ
http://www.usaco.co.jp/products/ovid/index.html
Ovid.:OvidSP 中国語インタフェースをリリース
2009年12月,OvidSPのインターフェイスに新たに中国語(簡体字・繁体字)が追加されました。
英語以外の言語によるインターフェイスは,すでにフランス語・ドイツ語・スペイン語が提供されており,いずれの言語もSelect a Database(データベース選択)やMain Search(基本検索)画面右上の
ハイパーリンクをクリックすることで切り替え可能です。

・Ovid Technologies Japan Office
http://www.ovid.jp/site/index.html
・弊社Ovid紹介ページ
http://www.usaco.co.jp/products/ovid/index.html


Springer:EQT VとGICが買収を発表
欧州の大手プライベートエクイティファンド*のEQT Vとシンガポールの国際投資管理会社GICのプライベートエクイティ部門であるGIC SIは,世界第二位のSTM出版者であるSpringer Science+Business Media(以下Springer)を,現オーナーのCandoverとCinvenから100%買収することで合意に至ったことを発表しました。それぞれの持ち分はEQT V が82%,GIC SIが18%となる見込みで,買収は2010年2月上旬を目安に完了する予定です。

 SpringerのCEOを務めるDerk Haank氏は,今回の買収がSpringerやSpringerの新たなパートナー
の双方にとって新たな成功の始まりとなること,また, Springerが意欲を持って進める電子化戦略
(”e” strategy )を前進させ,Springerの利害関係者の利益のためのより大きな投資を可能にする
こと,そして,Springer・社員・利害関係者にとって最良の解決法であることを述べています。

(*)プライベートエクイティファンド:未公開株式を取得し,株式公開や第三者に売却をすることで,
キャピタルゲインを獲得することを目的としたファンドのこと。(野村證券・証券用語解説集より引用)

・EQTプレスリリース
http://www.eqt.se/upload/Pressmeddelanden/Press_release_EQT_V_Springer_091211%20Eng.pdf

ユサコ年末年始休業日のお知らせ
弊社の年末年始休業日について以下の通りお知らせいたします。

  2009年12月29日(火) 〜 2010年 1月 4日(月) 休業
  ※12月28日(月)は14時まで営業

お客様にはご迷惑をおかけしますが,予めご了承くださいますよう宜しくお願いいたします。

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