本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2026/06/12

 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例

論文タイトル
T-cell large granular lymphocyte leukaemia with pure red cell aplasia harbouring a somatic STAT3 P715L mutation
論文タイトル(訳)
 STAT3 P715L変異を有するT細胞性大顆粒リンパ球白血病に合併した赤芽球癆の1例
DOI
10.1136/bcr-2025-268958
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 19, Issue 6
著者名(敬称略)
岡本 裕介 石山 賢一 他
所属
京都大学大学院医学研究科 血液内科学
著者からのひと言
 T-LGLLではSTAT3変異の多くがSH2ドメインに集中することが知られているが、本症例は初めてSH2ドメイン外のSTAT3 P715L体細胞変異を同定した点で極めて興味深い。さらに、病理学的にSTAT3活性化を証明し、シクロスポリンに良好な治療反応を示したことから、希少変異であっても臨床的意義を有する可能性が示された。分子異常と自己免疫性血球減少症との関連を考える上で、診断・病態解明・治療戦略に新たな視点を提供する症例報告である。

抄訳

本症例は、進行性貧血を契機に診断された50歳代女性のT細胞性大顆粒リンパ球白血病(T-LGLL)に伴う赤芽球癆(PRCA)の報告である。骨髄検査では赤芽球系の著明な減少を認め、末梢血フローサイトメトリーおよびT細胞受容体遺伝子再構成解析により単クローン性CD8陽性細胞傷害性T細胞の増殖が確認された。さらにNGS解析によりSTAT3遺伝子のP715L体細胞変異を同定した。この変異はこれまでSTAT3 gain-of-function(GOF)症候群における生殖細胞系列変異として報告されていたが、T-LGLLにおける体細胞変異としての報告はなかった。骨髄生検ではCD8陽性T細胞におけるリン酸化STAT3の核内集積が確認され、P715L変異によるSTAT3シグナルの恒常的活性化が示唆された。患者はシクロスポリン治療により徐々に造血能が改善し、6か月以内に輸血依存から離脱した。本症例は、T-LGLLにおけるSTAT3変異スペクトラムを拡張するだけでなく、SH2ドメイン外のSTAT3変異が疾患発症や治療反応性に関与する可能性を示した重要な症例である。

論文掲載ページへ