抄訳
Clostridioides difficile(C. difficile)は抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌であるが、近年では医療機関外で発症する市中関連感染(CA-CDI)の増加が世界的な課題となっている。本研究では、日本国内で採取した下痢外来患者、伴侶動物、家畜、野生動物および土壌由来検体を対象として、C. difficileの分離および全ゲノム解析を実施し、One Healthの観点から分子疫学的解析を行った。その結果、公園土壌および伴侶動物から高率に菌が検出され、コアゲノムSNP解析により、患者由来株と公園土壌由来株、ならびに犬由来株と公園土壌由来株の一部が近縁である可能性が明らかとなった。一方、これらの結果は感染伝播の方向性を示すものではなく、人・動物・環境の間で共通する環境リザーバーの存在を示唆する知見である。本研究は、日本におけるCA-CDIの疫学を理解する上でOne Healthの視点が重要であることを示すとともに、環境リザーバーの役割の解明や今後の公衆衛生対策の基盤となる知見を提供するものである。