抄訳
猫コロナウイルス(FCoV)はイエネコのほか希少ネコ科動物であるチーターにも感染する。FCoVは時に致死性の猫伝染性腹膜炎(FIP)を引き起こすが、飼育下チーター集団での長期的な感染動態や遺伝的多様性については情報が乏しい。そこで国内の単一動物園で暮らす17頭のチーターを3.5年間追跡し、糞便中のFCoV RNAとウイルス遺伝子配列を調べた。FCoVは閉鎖集団内で複数年にわたって維持され、RNAの検出パターンには個体ごとに大きな幅があった。無症状個体とFIP発症個体から得た準完全長ゲノムは、どちらもI型FCoVに属した。N遺伝子とS遺伝子のターゲット解析では集団内に複数のハプロタイプが見つかり、個体内で優勢となる配列も時間とともに入れ替わった。配列多様性はS遺伝子内でも一様ではなく、S1/S2開裂部位領域が1058/1060領域を上回った。非侵襲的な糞便モニタリングと遺伝子解析を組み合わせれば、希少ネコ科動物でもFCoVの長期的な維持と配列変化を追うことが可能である。