抄訳
タンパク質の最も豊富な翻訳後修飾の一つであるN型糖鎖は多様な構造を持つ。N型糖鎖の部分構造であるBisecting GlcNAcは、脳、特にニューロンに豊富に存在する。これまで、Bisecting GlcNAcの増加とアルツハイマー病態との関連は明らかにされてきたが、生理的条件の脳での本糖鎖の機能は不明であった。これを明らかにするため、本論文ではBisecting GlcNAc合成酵素MGAT3の欠損マウスを用い、ニューロンの形態や活動を評価した。その結果、MGAT3欠損ニューロンは野生型マウスのニューロンより突起が短く、さらにシナプス後部を形成するスパインが未成熟な形態をしていた。また、MGAT3欠損マウス脳では、痛み刺激後の神経活動の低下も認められた。さらに本マウスでは、興奮性シナプスの形成や活動に不可欠なグルタミン酸受容体の細胞内分布およびその調節に関わるTARP分子との相互作用の異常が認められた。これらのことから、Bisecting GlcNAcは生理的な脳におけるシナプスの成熟に関わることが明らかになった。