抄訳
酵母は、栄養条件に応じて栄養増殖と有性生殖を使い分ける。ところが、国内のショウジョウバエから分離されたジャポニカス分裂酵母は、栄養条件が良いにもかかわらず、恒常的に胞子を形成した。この形質は栄養条件が良い環境では増殖に不利であるにもかかわらず、国内各地から同じ形質を持つジャポニカス分裂酵母が見つかった。
そこで、昆虫による捕食がこの形質を維持する選択圧になっていると考え、ショウジョウバエとジャポニカス分裂酵母を用いた共生実験を行った。その結果、ハエによる捕食と消化が、恒常的に胞子を形成する形質に対する正の選択圧になり得ることが明らかになった。また、この形質は、有性生殖の開始を調節する複数の因子に生じた比較的軽微な変異が組み合わさることで獲得されたことが示唆された。
以上の結果から、国内の野生酵母集団では、昆虫との相互作用を介した自然選択により、恒常的な胞子形成という新たな形質を持つ遺伝集団が形成され、維持されていると考えられる。