抄訳
この論文は、細胞内蛋白分解機構の1つであるオートファジーの甲状腺特異的ノックアウトマウスを作出して、甲状腺機能・形態の変化を検討したものである。Atg5flox/floxマウス(ATG5はオートファジーに必要な蛋白の1つ)とTPO-Creマウス(甲状腺のみでCreを発現)を交配して作出したノックアウトマウスでは、ATG5の発現が消失し、LC3の点状集積消失とp62の集積が認められたことから、オートファジー機能欠損が確認された。1年間の観察期間を通じてノックアウトマウスの甲状腺機能は正常であったが、4か月齢マウスで、活性酸素の増加によると考えられるDNA損傷マーカー(8-OHdGと53BP1集積)の増加とユビキチン化蛋白の集積が認められ、8~12か月齢マウスでは、アポトーシス細胞死による濾胞上皮細胞の減少と、それによる濾胞上皮細胞の菲薄化、さらに異常形態濾胞(瓢箪型)の出現が観察された。これらの結果から、オートファジー基礎活性が甲状腺濾胞上皮細胞の生存・ホメオスターシス維持であることが明らかとなった。