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2019/10/16

みかんの皮より分離されたシュードフルクトフィリック乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株の特徴解析

論文タイトル
Pseudofructophilic Leuconostoc citreum Strain F192-5, Isolated from Satsuma Mandarin Peel
論文タイトル(訳)
みかんの皮より分離されたシュードフルクトフィリック乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株の特徴解析
DOI
10.1128/AEM.01077-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 20
著者名(敬称略)
前野 慎太朗、遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科

抄訳

 フルクトフィリック乳酸菌 (FLAB) は花や果物といったフルクトース豊富な環境に生息および適応している乳酸菌である。筆者らがみかんの皮から分離した乳酸菌 Leuconostoc citreum F192-5 株は他の L. citreum 菌株と大きく異なり、一般的な生物が生育基質として最も好むグルコースをほとんど代謝しない一方で、フルクトースを好むという FLAB 様の特徴を菌株特異的に示す。既知の FLAB は糖代謝関連遺伝子の特異的欠損を含むゲノムレベルでの退行的進化を行っていることを我々はこれまでに報告しているが、当該菌株ではこのゲノムレベルでの退行的進化は見られなかった。
 FLAB はアルコール脱水素酵素とアセトアルデヒド脱水素酵素の活性を有する二機能性タンパク質 (AdhE) をコードする遺伝子 adhE を欠損させているために細胞内の酸化還元バランスを欠き、グルコースを代謝しないことが知られている。しかし、本菌株は adhE を有しているもののプロモーターの欠落により当該遺伝子が発現していないため、グルコースを代謝することができない事を明らかにした。FLAB はフルクトースを代謝することでグルコース代謝時よりも効率よくエネルギーを生産することが知られていることから、本菌株の菌株特異的な特徴は、多様な生息域を有する乳酸菌の生存戦略の一環であると考えられた。

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