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2020/02/27

自己免疫性下垂体疾患:新たな疾患概念とその臨床的意義

論文タイトル
Autoimmune Pituitary Disease: New Concepts With Clinical Implications
論文タイトル(訳)
自己免疫性下垂体疾患:新たな疾患概念とその臨床的意義
DOI
10.1210/endrev/bnz003
ジャーナル名
Endocrine Reviews
巻号
Vol.41 No.2 (bnz003)
著者名(敬称略)
山本 雅昭, 高橋 裕 他
所属
神戸大学大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学

抄訳

リンパ球性下垂体炎やACTH単独欠損症などの下垂体疾患は自己免疫が示唆されているが、その機序は明らかではない。
抗PIT-1抗体症候群(抗PIT-1下垂体炎)は最近報告された下垂体炎の亜型であり、後天性に下垂体ホルモンの中でGH, PRL, TSHの特異的欠損をきたす新しい疾患概念である。その原因として胸腺腫や悪性腫瘍が、GH, PRL, TSH産生細胞に特異的な転写因子であるPIT-1を異所性に発現し、免疫寛容破綻を生じることが示されている。そしてマーカーとして血中に自己抗体である抗PIT-1抗体を認めるとともに、PIT-1タンパクを認識する細胞障害性T細胞が下垂体細胞を特異的に障害することが明らかになった。
最近、ACTH単独欠損症に肺大細胞神経内分泌癌を合併した症例が報告された。興味深いことに、腫瘍がACTHを異所性に発現しており、血中には抗POMC(ACTHの前駆体)抗体とPOMC特異細胞障害性T細胞を認めたことから、傍腫瘍症候群特に傍腫瘍性神経症候群と同様の機序で発症したことが示された。
これらの結果は、原因不明の自己免疫性下垂体疾患の少なくとも一部の成因が傍腫瘍症候群であることを示しており、本総説ではこれらの新しい疾患概念とともにその臨床的意義を解説する。

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