抄訳
甲状腺ホルモン脱ヨード酵素には、DIO1、DIO2、DIO3の3種類があり、甲状腺ホルモンの活性化あるいは不活化を行っている。本研究ではDIO1、DIO2、DIO3それぞれについて新規調節因子を探索するため、2480種類からなる化合物ライブラリーに対しスクリーニングを実施した。プロモーターアッセイを基盤とした独自のハイスループットアッセイを構築し、プロモーター特異性の確認、細胞毒性の除外、再現性・用量依存性の確認を経て、ヒット化合物を確定した。ヒット化合物について、我々の診療科のコホートの後ろ向き解析を用いた検証に進んだ。具体的には、ヒット化合物内服前後の甲状腺機能の測定結果が存在した症例を解析し、アドレナリン受容体作動薬であるリトドリン、PDE5阻害薬であるタダラフィル、複数のチロシンキナーゼ阻害薬の内服によって有意な甲状腺機能の変化が見られた。マウスへの投与実験も行い、リトドリンは甲状腺におけるDIO2の発現を増加させ、コホート研究の結果と同様に遊離T3/遊離T4比を上昇させることを明らかとした。さらには、本論文で提示したヒット化合物のリストから新たな研究への着想が生まれると期待される。