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2022/08/26

深海性二枚貝シマイシロウリガイの共生細菌は一次卵母細胞外表面に伝播される

論文タイトル
Symbiont Transmission onto the Cell Surface of Early Oocytes in the Deep-Sea Clam Phreagena okutanii
論文タイトル(訳)
深海性二枚貝シマイシロウリガイの共生細菌は一次卵母細胞外表面に伝播される
DOI
10.2108/zs200129
ジャーナル名
Zoological Science
巻号
Zoological Science, Volume 38, Issue 2
著者名(敬称略)
井川-上田 かなえ、生田 哲朗 他
所属
海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター

抄訳

動物は微生物との共生関係を結ぶことによって、様々な環境適応能力を得ている。宿主の世代を越えて共生微生物を安定的に伝達することは、進化的な時間を通じて共生関係を維持する上で重要なイベントである。しかし、共生微生物の宿主世代を越えた伝播機構については断片的な理解しか進んでいない。深海性二枚貝類のシマイシロウリガイ(Phreagena okutanii)は、鰓上皮細胞内に化学合成独立栄養細菌を共生させ、生存に必要な全ての栄養源を共生細菌に依存している。本研究では、この共生細菌と宿主雌性生殖細胞との、生殖細胞の発達段階を通じた空間的な関連性の変化に注目した。まず、シマイシロウリガイの幼若個体の性判別法を確立し、雌の卵巣で観察される生殖細胞の発達段階を形態学的に分類した。次に、3次元蛍光観察および光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を用いて共生細菌と生殖細胞の卵巣内での局在性を調べた。その結果、共生細菌は幼若個体卵巣内の卵原細胞のクラスターにはなく、一次卵母細胞の細胞膜外表面に局在していることが分かった。これらの結果に基づいて、シマイシロウリガイにおける共生細菌の垂直伝播の過程とそのメカニズムについて考察した。

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