抄訳
エクオールは大豆イソフラボンのダイゼイン代謝産物であり、鏡像異性体のS体とR体が存在する。我々はこれまでにS体がラセミ体よりも高い骨量減少抑制効果を有することを報告したが、R体の効果は明らかでない。本研究では、エクオール鏡像異性体が骨代謝に及ぼす影響と詳細な作用機序について、破骨細胞及び骨粗鬆症モデルである卵巣摘出(OVX)マウスを用いて比較検討を行った。その結果、R体と比較してS体で強い破骨細胞分化抑制がみられたが、骨吸収シグナル経路(MAPK/NFκB)に対する影響に有意な差はなかった。一方で、S体のみが成熟破骨細胞のアポトーシスを促進し、この作用が両鏡像異性体の破骨細胞形成抑制効果の差に寄与していると考えられた。さらにS体及びR体を皮下投与したOVXマウスでは、S体のみ大腿骨の骨密度低下を抑制し、血中及び骨中のエクオール濃度はR体よりもS体で高値を示した。以上より、(S)-エクオールは(R)-エクオールと比較して高い骨吸収抑制作用を有し、骨疾患リスク低減の一助となる可能性が示唆された。