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2022/09/29

TIA-1プリオン様ドメインのALS変異は高度に凝縮した病原体構造を誘起する

論文タイトル
ALS mutations in the TIA-1 prion-like domain trigger highly condensed pathogenic structures
論文タイトル(訳)
TIA-1プリオン様ドメインのALS変異は高度に凝縮した病原体構造を誘起する
DOI
10.1073/pnas.2122523119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS2022 Vol. 119 No. 38 e2122523119
著者名(敬称略)
関山 直孝 他
所属
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻生物物理学教室構造生理学分科

抄訳

T-cell intracellular antigen-1(TIA-1)は、プリオン様ドメイン(PLD)の自己組織化を介してストレス顆粒の形成に関与している。TIA-1のPLDには、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やウェランダー遠位型ミオパチー(WDM)といった神経変性疾患に関連するアミノ酸変異が同定されていたが、これらの変異がPLDの自己組織化特性にどのような影響を及ぼすのかは不明であった。本研究ではこれらの変異が引き起こす微細な構造変化を明らかにした。NMR解析では、PLDの動的構造が5アミノ酸残基の物理化学的性質の協調により決定されることを示した。分子動力学シミュレーション、3次元電子線結晶構造解析、生化学的アッセイにより、ALS変異のP362LとA381Tはそれぞれ、ベータシート相互作用と高密度凝縮を誘導することにより、液滴形成を促進することが明らかとなった。これらの結果は、ALS変異が液滴形成とそれに続くアミロイド線維化を促進することを示唆しており、我々はこの凝縮過程が病原性を生み出しているのではないかと考えている。

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