抄訳
甲状腺ホルモンは、色覚に関わるオプシンの発達に重要であり、甲状腺機能低下モデルマウスでは、M-オプシンの発達が遅れ、S-オプシンの網膜上での分布が拡大する。しかし、母体甲状腺機能低下症がオプシンの発達に及ぼす影響については不明であった。本研究では、中枢性甲状腺機能低下モデルマウスである甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンノックアウトマウス(TRH-/-)を用い、TRH+/-の血清T4値が野生型と同様であるが、TRH-/-の血清T4が約60%低くなる特性を生かし、母体甲状腺機能低下症がオプシン発達に及ぼす影響について検討した。その結果、甲状腺機能が低下した母体TRH-/-から生まれたTRH+/-では、甲状腺機能がほとんど低下していない母体TRH+/-から生まれたTRH+/-に比べて、生後12日目のM-オプシン発現が低かった。これらの結果は、母体甲状腺機能低下症が新生児マウスの発育初期にM-オプシン発達遅延を引き起こす可能性を示唆するものであった。