抄訳
HTLV-1感染により、感染者(キャリア)のおよそ5%が長い潜伏期間を経て難病である成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を発症するリスクを背負っているが、HTLV-1感染に対する予防法や効果的な治療法は開発されいない。本研究グループはこれらの開発を加速するため、HTLV-1感染霊長類モデルが必要であると考え、HTLV-1感染カニクイザルモデルの確立に成功した。ウイルス単体としてではなく感染細胞から新たな細胞へ伝搬するHTLV-1では、感染源として用いるHTLV-1産生細胞株が重要であると考え、ATL患者由来のHTLV-1高産生細胞株であるATL-040細胞をウイルス源としてカニクイザルに静脈接種したところ、100%の確率で感染が認められた。感染も長期にわたり維持され、慢性感染症であるHTLV-1感染を反映していた。また、ヒトにおいて高いウイルス量や宿主免疫環境と発症の関連が報告されていることから、免疫制御によるアプローチによりウイルス量の増加が観察され、宿主免疫によるHTLV-1制御が示唆された。