抄訳
レタス結球部が腐敗する病害(レタス腐敗病)は、日本をはじめとする世界各地で発生しており、深刻な被害が報告されている。Pseudomonas marginalisがその主要な原因菌の1つとされていたが、本菌は、表現形質では簡単に識別できないような複数の隠蔽種で構成された「種複合体」であることが明らかになりつつある。そして、このことが原因となって本菌の実態把握が妨げられ、本病の診断・防除技術を高度化する上での阻害要因になっている。そのため、本菌の実態を遺伝的・系統的に把握し、合理的な分類体系を構築することが喫緊の課題とされている。本研究では、微生物保存機関である農業生物資源ジーンバンクにおいて、P. marginalisとして保存されているレタス腐敗病菌を対象として、表現形質、化学分類学的性質、分子系統解析および比較ゲノム解析等に基づき、分類学的な検討を行った。その結果、Pseudomonas属の新種として扱うべきものが3菌株見出されたので、そのうちのMAFF 301350株をPseudomonas aegrilactucae、MAFF 302030株とMAFF 302046株をPseudomonas morbosilactucaeと命名することを提案した。